「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第7話

「承りました。
モントローズ公爵家当主の座を引き継がせていただきます。
が、エイリンとヌライの処分はどうなされます。
エイリンとヌライの悪行は、ご隠居の治世中に行われたことです。
ご隠居が処断すべきでしょう」

「いや、それは違う。
エイリンとヌライに罠をしかけられたのはファティマだ。
ファティマに報復する権利がある。
隠居である私がしゃしゃり出る事ではないだろう」

陰険な方法を使ってきますね。
私に復讐の機会を与えると見せかけて、エイリンの実家からの恨みを、私に押し付けるつもりですね。
しかも私の名を呼び捨てにすることで、自分が当主の父親だと家臣団に印象付け、影響力を維持するつもりです。

まあ、私も父の事を名前や敬称で呼ばず、ご隠居と呼んで権力の座から退いた印象を家臣団に与えようとしていますから、お互い様ですね。
エイリンとヌライに関しては、私が直接報復することに、なんの利点もないわけではありません。
当主として力があるところを、代替わりして権力の位置が変わったことを、家臣団に強く印象付けることができます。

すでに私が当主になったと宣言されているのです。
私が当主なのに、隠居にエイリンとヌライを処断する権限があると家臣団に思われては、今後隠居に背後から襲われる可能性があります。
私の命令よりも隠居の命令を優先する家臣の数は減らしておかないといけません。

「止めなさい
止めるのです!
私を誰だと思っているのですか!
私はモントローズ公爵夫人ですよ!
認めません!
絶対に認めません!
お前のようなアバズレがモントローズ公爵家の当主などと認めるモノですか!
モントローズ公爵の当主はヌライが継ぐのです!
ヌライはサムベルを婿に迎えるのです!
ロクスバラ侯爵家とモントローズ公爵家とハミルトン公爵家が手を結べば、王家など恐れるに足りません!
お前たちは新王家の直臣になれるのですよ!
爵位が与えられるのですよ!
今からでも遅くないのですよ!
このアバズレを殺して忠誠心を示しなさい!」

やれ、やれ、困ったものです。
新たな情報がないか、少し話させていましたが、ここに来て王家に対する謀叛計画がでてくるとは思いませんでした。
隠居が顔色を悪くしていますね。
隠居もこの話に加担していましたね。

さて、どうしたモノでしょうか?
これが王家に伝われば、モントローズ公爵家が処罰を受ける可能性があります。
いえ、今の弱体化した王家では、モントローズ公爵家を処罰できないでしょう。
王家が一番恐れているのはハミルトン公爵家ですからね。
まずは口封じしておきましょう。

「口先だけの痴人の戯言とはいえ、王家に対する不遜な言葉は聞き捨てなりません!
私を罠に嵌め、モントローズ公爵家の名誉を傷つけたことと合わせ、この場で成敗します!」

私はエイリンとヌライを、自らの手刀で一刀両断に殺しました。

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