「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第6話

「くっくっくっくっ。
あっはっはっはっは!
愉快だ。
本当に愉快だ!
よくやってくれた。
よくぞ期待に応えてくれた!
知っていた。
知っていたのだよ、ファティマ。
全てを知ったうえで、其方がフセインの首を獲ってきてくれることを期待して、ハミルトン公爵家に送り込んだのだ。
まあ、フセインが留守にしていたのは想定だが、それは仕方がない。
それでもフセインの取り巻きと、ハミルトン公爵家の中核は潰した。
金銀財宝も奪ってきてくれた。
開戦の口実も作ってくれた。
大功績だ、ファティマ」

あきれ果ててしまいますね。
本当にこれが父上の策謀だったとしても、あまりに私をバカにしています。
本当に策謀だったのなら、私に打ち明けるべきでしょう。
私が生きて戻ったから、生き残るために嘘八百並べ立てていると思います。

「そのような言い訳が通じると思っているのですか?
本当にこれが父上の謀略だったら、私にだけは打ち明けるのが普通です。
私に何も知らせず、私を陥れるのに失敗したから、言い訳しているだけですね。
そんな卑怯未練な言い訳など聞けませんね。
私は貴方と違ってモントローズ公爵家の誇りを持っています。
ハミルトン公爵家に尻尾を振って、娘を生贄にするような卑怯者ではありません。
正々堂々と私と一騎打ちしなさい。
どちらがハミルトン公爵家の当主に相応しいか証明してあげます!」

「くっくっくっくっ。
あっはっはっはっは!
立派だ!
本当に立派だ!
それでこそ我が娘だ!
モントローズ公爵家の跡継ぎに相応しい娘よ!
確かに私は力不足の当主であった。
後妻の実家の力を借りねば、ハミルトン公爵家に対抗できぬ無力な当主よ。
それでも当主は当主だ。
私の実力の及ぶ範囲でモントローズ公爵家を護らねばならなかった。
だがこれでようやく肩の荷が下せる。
私は隠居しよう。
私の試練に耐え、見事モントローズ公爵家の名誉を護り、ハミルトン公爵家を叩けるほどの後継者となってくれた。
そんなファティマを前にして、おめおめと当主の座に居座ろうとは思わんよ。
本日ただいまよりファティマがモントローズ公爵家の当主だ!
よいな、皆の者!」

してやられました!
問答無用で三人とも殺してしまうべきでした。
父上にはうまうまと逃げられてしまいました。
上手に言い訳させてしまいました。
一族一門家臣領民に、力不足を自覚しながら必死でモントローズ公爵家を護ってきた当主という、好印象を与えてしまいました。
しかも潔く当主の座を私に譲ったように見せかけています。
本心は、隠居後もある程度の権力と忠誠心を家臣団に維持するための策謀です。
ここで父上を殺せば、私の信望が地に落ちてしまいます。
ここは臨機応変に対応するしかありませんね。

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