「ざまぁ」「婚約破棄」短編集4巻

克全

第4話

「ねえ、あの噂聞いた?」

「なに、なに、なに?
誰の恋話?」

「バカ、恋話じゃなくて呪いよ。
ララァて子を襲ったウンルオッホ皇国の馬鹿護衛二人が、呪い殺されたって噂よ」

「ああ、あの噂ね。
聞いてる、聞いてる。
ほんと、ウンルオッホ皇国の連中て、傲慢でいけ好かない奴らばかりよねぇ」

食堂の少し離れた席にいる女子たちが、聞こえよがしに噂話をしています。
事の始まりとなったララァと私に嫌味を言っているわけではなくて、普段から大国を笠に大きな顔をしているウンルオッホ皇国出身の女生徒に対して、ここぞとばかりに嫌味を言っているのです。

あの事件の始末は大事になりました。
ゲームの設定ではクリスティアン皇太子は優しい性格で、自国出身の生徒が学院内で好き勝手していることに、とても心痛めていました。
特に自分の護衛が、多くの生徒を傷つけ憎まれていることに苦しみ、それを解決することでララァに魅かれ結ばれるというのが一つの成功シナリオなのですが、私はララァとクリスティアンを結ばせる気がないので、イベントを発生させていません。

ですが私が勝手気ままに色々やったことで、隠しシナリオにもなかった、全く知らないストーリーになり始めています。
クリスティアンの護衛二人が学院追放刑になり、犯罪者の入れ墨を顔に入れられて、ウンルオッホ皇国に帰されるなんてシナリオは、私は知りませんし、愛好者専用掲示板でも噂になったことがありません。

クリスティアンは護衛二人の罪を認めて本国に報告したそうですが、傲岸不遜のウンルオッホ皇国は、逆に大陸連合魔法学院に厳重な抗議をしてきたそうです。
皇太子の護衛に犯罪者の入れ墨を勝手に入れるなど、平民が騎士に対して不遜極まりないという理由でです。
馬鹿護衛二人は近衛騎士だったそうです。

ウンルオッホ皇国は軽い脅しのつもりだったというのがもっぱらの噂です。
皇国も、相手が小国とはいえ貴族令嬢を自国の近衛騎士が乱暴しようとしたことも、同じく小国とはいえ王女を面罵したことも、近衛騎士が悪いとは理解しているが、大国の面目があるので表向きには謝れないので、軽く脅して面目を立ててから、内々で近衛騎士を処分して詫びにならない詫びにするのが、ウンルオッホ皇国と小国のいつもの関係だったようです。

ですが今回はそうはいかなかったそうです。
大陸連合魔法学院側も、学内平等の面目にこだわったのだそうです。
ウンルオッホ皇国が脅しをかけてきた直後に、二人の近衛騎士を呪殺したのです!
いえ、二人だけではなく、直属上司である、近衛騎士団長と副近衛騎士団長まで呪殺するという、信じられない思い切った報復に出たのです。

さらに言えば、クリスティアン皇太子が獣欲を満たすために、護衛に令嬢を攫わせる命令を下した疑いがある。
黒幕がクリスティアン皇太子である可能性があるので、魔法で脳の記憶を調べて、黒幕であれば顔に犯罪者の入れ墨を入れると、ウンルオッホ皇国に正式通告したのです。
学内の掲示板にも公示したのです。
もう戦争必死の状態で、ウンルオッホ皇国出身の学生は針の筵状態なのです。
でもそれはララァと私も同じです。


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