「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第13話

「それはどこの国なのですか?」

「ゲドルナ王国です。
ゲドルナ王国ではこの薬は役に立ちません」

「ああ、そう言う事でしたか。
それで分かりました。
治療神アスクレーピオス様が守護されているラゼル大公国が、なぜゲドルナ王国との国交を禁じたのか、これでようやく理解できました。
治療神アスクレーピオス様に嫌われたのなら当然ですな」

アルバンが誤解していますが、このまま誤解させておきましょう。
トヨウケ神様は無名の神様なので、有名なアスクレーピオス神様だと思わせておく方がいいでしょう。

アルバンとは、いい関係を築く事ができました。
アルバンは約束を守って、自由戦士を十五人も紹介してくれました。
彼らは、今は自由戦士ではありませんが、自由戦士を目指す友人や弟子まで引き連れてきてくらたので、総勢四十七人もの兵力が村を守ってくれます。
いえ、アルバンの本心は金を生む私を護らせる事でしょう。

自由戦士達は情報通でした。
傭兵として生きていくには、情報がとても大切なのだそうです。
彼らの話では、ゲドルナ王国は滅亡の危機に瀕しているそうです。
ラゼル大公国の大公ヨレナス伯父様が、私の追放劇を聞いて激怒された事で、薬の輸出制限だけでなく、完全な国交断絶を大陸中に通達したそうです。

それに逆切れしたゲドルナ王国のグランナ第二王子が、ラゼル大公国に侵攻しようとしたそうですが、この大陸からアスクレーピオス神様の魔法薬が失われる事を恐れた周辺国が、ゲドルナ王国に攻め込んだそうです。
戦闘狂と聞いていたグランナ第二王子ですが、ラゼル大公国以外の国境を接する四カ国から侵攻されては、ラゼル大公国に攻め込む事ができなかったそうです。

普通なら、ゲドルナ王国の守護神ロキ様が助けてくれるはずです。
ですが、ロキ神様は神々との戦いを望んでおられます。
邪悪で移り気な上に、狡猾で嘘つきな神様です。
しかも悪戯が大好きなので、自分が愉しむためなら、守護契約をした人間の国を滅ぼすくらい、平気でやってしまうのです。

「レオルナ様。
ゲドルナ王国のデイヴト国王が、大陸中の国に詫び状を送ったそうです。
全面的にラゼル大公国に自分達の非を認めたそうです。
ラゼル大公国の公妹ウェイラ公爵夫人を毒殺し、レオルナ公爵令嬢を追放した罪で、イルレク王太子とドゼル侯爵家の血族全てを処刑したそうです」

「へえ、そうなのですか」

「それと、レオルナ公爵令嬢に戻って来て頂いて、グランナ王太子の正妃に迎えるので、これまでの事を許して欲しそうです」

自由戦士達は、私がレオルナだと推測しているようですね。
私がゲドルナ王国に戻る気があるのか気になるようです。

「ゲドルナ王国は滅びるでしょう。
そんな国にレオルナ公爵令嬢は帰られないと思いますよ。
母親を毒殺させるような国は、滅びた方がいいと思ってるのではありませんか」

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