「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第1話

「キレナ公爵家令嬢レオルナ!
この淫売がぁ!
私の婚約者だというのに、神官と不義密通を犯すなど断じて許さん!
本来なら斬首にしても飽き足らないが、キレナ公爵家の長年の忠勤に免じ、自殺する事を許してやる。
記録には病死としてやるから、ありがたく思え!」

「茶番もたいがいにしてもらいましょうか!
母上に続いて私まで殺すおつもりですか?!
私は不義密通など犯しておりません。
私を殺したいのなら、偽りの証言ではなく、確かな証拠をだしてください」

そう簡単に殺されるわけにはいきません!
母上を殺されて以来、報復の機会を待ち続けてきたのです。
王侯貴族の介入を拒む清廉潔白な諸神殿の逃げ込み、隠忍自重してきたのです。
この場で憎いコンスとエラーモを討ち果たして見せます。

「おのれ、おのれ、おのれ!
王太子の私に逆らうなど、不遜にもほどがある!
断じて許さん!
近衛の者どもよ、この腐れ女を殺してしまえ!」

「待て!
この愚か者が!
ラゼル大公国と戦争をする心算か!」

「なにを言われているのです、父王陛下。
なぜレオルナを殺した程度でラゼル大公国と戦争になるのです?」

「この大バカ者が!
貴族の婚姻関係を覚えろと、何度言ったら分かるのだ!」

「そんな面倒な事などせずとも、私は王太子で、父王陛下は国王ではありませんか。
国内での事は、父王陛下と王太子の私が絶対権力者ではありませんか」

「大バカ者!
コンスの淫売が、キレナ公爵家の正室になりたくて、レオルナ嬢の実母を暗殺した疑いがあるのだ!
レオルナ嬢の実母ウェイラ夫人は、ラゼル大公ヨレナス殿の妹だ!
あの事件以降、ラゼル大公国とは国交が断絶している。
ラゼル大公国でしか作れない、治療神アスクレーピオス様の治療薬が、一切我が国に入ってこなくなった。
迂回輸入した治療薬も、我が国の民には全く効果が現れなかった。
お前も病で死にかけたであろうが!」

「そんな……
それは酷いではありませんか。
抗議しましょう。
必要なら攻め込んで」

「大バカ者!
治療神アスクレーピオス様が守護される国に攻め込む準備をしたとたん、周辺国から袋叩きにあうわ!
ラゼル大公国に何かあれば、この世界から治療神アスクレーピオス様の治療薬が消えてしまうのだぞ!
それでなくとも、コンスの淫売がウェイラ夫人を毒殺して以来、我が国は周辺国から睨まれているのだ。
守護神ロキ様の助けがなければ、我が国はとうに滅んでおるわ」

イルレクのバカが、ようやくこの国の状況を理解したようです。
国王がここまで理解しているのに、母上を毒殺したコンスを処罰できない理由。
それが全ての元凶です。



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