「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第8話古代神の巫女視点

ダンジョンに潜って狩りをするのはとても面白い!
最初は無差別に狩りをしていたのですが、コシンに薬を頼まれていた事を思い出して、獲物の回収を諦めて最深部にまで潜ろうとしました。
ああ、コシンとは私に薬を探して欲しいと言った来た若くてきれいな女性です。

でもコシンは、最初に言った事と違う事を言いだしました。
狩りの獲物をちゃんと回収しようと言うのです。
あまりにも辻褄にあわない事を言いだしたので、生真面目なコナーも知略縦横無尽のソニーも、極度に警戒して斬りかからんばかりです。

ですが私には、そんなに気になる事ではありませんでした。
もともと胡散臭いのは分かっていました。
薬が目的ではなく、単に狩りがしたいだけなのかもしれません。
いきなり取り出した魔法袋も、薬に困っている庶民が持っているようなモノではありませんから、ここに狩りの成果を集めて、途中で逃げるのかもしれません。

でも、それならそれで構いません。
私には狩ができるだけでとても楽しいのです。
その日の食事ができて、コシンが逃げ出した時の非常食を忘れず持ち、魔法袋に入れなくても大丈夫な、小さくて単価の高い魔石や魔晶石を手持ちできるのなら、コシンが何時何処で逃げ出しても構わないのです。

それに、胡散臭くはありますが、コシンが悪い人間とは思えないのです。
なんといっても、コシンが作ってくれる料理が美味しいのです。
単純に狩った獲物を焼くだけなのですが、細かい包丁の入れ方で食感が劇的に変化し、絶妙な焼き加減と塩加減で提供してくれるのです。
私も料理は下手ではありませんが、それでもできあがった料理の味には、雲泥の差があるのです。

その気持ちは私だけでなく、カイもコナーもソニーも同じだったようで、食事をするたびに警戒心が緩んでいました。
今回の件も、何度か食事したら解消されると思います。
ですが今は駄目ですね。
今は私が仲を取り持たなくてはいけません。

「コナー、ソニー。
勝手な真似はよして。
このパーティーのリーダーは私よ。
私がこのまま狩りを続けると決めたなら、それに従ってもらうわ。
私の言う事が聞けない、私の決断が信じられないというのなら、この場でパーティーから出て行って」

私の言葉に、コナーとソニーが愕然といています。
二人とも私が同調すると思っていたようです。
馬鹿ですね。
私は細々と考えるのが苦手だし嫌いなのです。
直感的に信じられると思ったら、よほどのことがない限り嫌う事も裏切る事もありません。

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