「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第6話古代神の巫女視点

「お願いでございます。
どうかお助け下さい。
病気の母を助けるためには、ダンジョンの最奥にあるを薬が必要なのです。
どうか薬を取りに行くのを助けてください」

絶世の美女とはこういう女性の事を言うのでしょう。
カイ達三人も見惚れています。
この女性に眼がいっている間に、逃げてしまうのが一番です。
私がいなくても、カイ達三人なら、ダンジョンを攻略して薬を手に入れる事くらいは、簡単にやれるはずです。

「私にできるお礼は何でもします。
死ぬまで忠誠を尽くせと言われたらその通りにいたします。
奴隷になれと申されるのでしたら、奴隷となりお仕えいたします。
ですから、どうか、どうかお手伝い願います」

問題は、この娘が私だけ見ているという事です。
明らかに鍛え抜かれた強者であるカイ達三人ではなく、私にだけ頼むことです。
これではカイ達に押し付けるのは不可能です。
実に困った事です。
カイ達に押し付ける、何かいい方法はないでしょうか?

「娘さん。
なぜ俺達ではなくアメリに頼む。
正直に話さないとこの場で殺すぞ」

ソニーが娘の言動に違和感を感じたようです。
私も疑問に思っていたのですから、知略縦横無尽のソニーなら当然でしょう。
しかもソニーは、娘の言動に罠を感じたようです。
確かに神殿の庇護がなくなった私達は、色々と気をつけないといけません。
ですが、すでに神殿から追放された私を罠に嵌めて利益を得られる者など、本当にいるのでしょうか?

「正直に話します。
貴方達のリーダーが、この娘さんに見えたからです。
娘さんが助けてくれると言えば、貴男達も手伝ってくれると思ったからです。
それに、女の私が男性の貴男達にお願いするのは、何かと不安があります。
娘さんにお願いしたら、そのような諸々の不安がなくなります」

「……誰もが納得しそうな言い訳だが、俺は騙されんぞ。
そもそも俺達のリーダーはこの娘ではない。
誰が見ても俺達の中の誰かが、いや、俺がリーダーに見えるはずだ」

ソニーは自信満々ですね。
ですがそのように言い切るから、聖堂騎士団でも孤立していたのです。
突出した能力があり、百騎長の地位を得たのに、多くの者から無視されたのです。
まあ、実家が貴族士族の聖堂騎士達が、孤児出身の三人を不当に扱っていたのが一番の原因ですが。

「分かっておられないのですか?
三人とも娘さんの一挙手一投足を注視し、それで次に何をすべきか決めています。
まるでリーダーに従う犬のようです。
そんな事をしていて、娘さんの配下ではないと言っても、誰も信じませんよ」

犬!
元とはいえ、聖堂騎士団の百騎長を三人を犬呼ばわりしました。
この子が殺されてしまいます!


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