「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第55話

「正式な布告があった。
この国にはかなりの知恵者がいる。
これで反対派は力を失う」

私がウィリアムから話を聞いた翌朝、電光石火の速さで魔力検査の事が王国中に布告されました。
布告する直前だから情報を漏らしたのか、情報が漏れたから翌日に布告したのか、判断が難しいです。

「なにがあったの?
また出て行かないといけないの?」

横に座って食事をしていたネイが不安そうに話しかけてきます。

「大丈夫よ。
まだ出てい行かないわよ。
万が一出て行くときには、必ず私が一緒よ
それにティシュトリヤも若駒たちも一緒よ」

「うん」

私の横で、蜂蜜とバターたっぷりのパンケーキを、美味しそうに食べていたネイが、まだ不安そうにしています。
話は理解してくれたようですが、出て行きたくないのが一目瞭然です。
ここでの生活が気に入っているのでしょう。
ウィリアムが内心勝ち誇っている気がして、無性に腹が立ちます。

ですがそれも仕方がありませんね。
ネイがここでの生活を大切に思っているのなら、それを前提に作戦を組み立てなければいけないでしょう。
もう今までのように知らぬふりはできません。
ウィリアムとイライアスに確認しておかないといけません。

「ウィリアムとイライアスは残ってくれるのね?」

「ある意味チャンスだからね。
僕は残るよ」

ウィリアムは残る気のようです。
まあ、もう確認する必要もないのですが。
イライアスの言質も取っておくほうがいいでしょう。

「そんなに睨むなよ。
俺も残るよ。
俺達兄弟は一心同体だからね」

「従者の人達も残るのね」

「ああ、彼らも最後まで残ってくれるよ」

イライアスがそのまま返事してくれました。

「今まで確認する事を避けてきたけれど、二人は王族の出だよね。
魔力的にはどうなの?
王族の基準を満たしているの?」

二人が視線を合わせて話すかどうか確かめています。
でも話す気がないのなら、最初から私達を見捨てて逃げているでしょう。
確認するのは、どちらが話すかの確認ですね。
やはりこういう場合はウィリアムが話してくれるようです。

「ああ、想像通り王家の出で、魔力的にも王族級だ。
私達の母国は、王族級の魔力持ちが多いわりに領地が狭くてね。
私達は後継者争いを避けるために国を出たのさ。
だから今回の件は好機なのだよ。
一族の血統を他国に広めることができる。
それも王族としてね。
だが、ルシアとネイがいるから王になれるとは思っていないよ。
できれば公爵、最低でも伯爵にはなれるだろうね」

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