「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第50話

「ママこれでいい?」

「ええ、いいわよ。
とてもよくできているわ。
完全に覚えるまで、同じものを作れる?」

「作れる!
ママのお手伝いする!」

ネイが張り切ってお手伝いをしてくれます。
その熱心さが、私に捨てられたくないという気持ちから来ているのなら、あまりにも可哀想すぎます。
そのような恐怖を払ってあげるためにも、誤解することにないように、常に愛情を注いであげなければいけません。
私がネイを捨てくことがないと、信じてもらわなければいけません。

私達は奥屋敷の一角を占拠しています。
見張り台にも使える塔一つを含めた、広い場所です。
サンディランズ公爵家の後継者、私、ディスタンス女伯爵ルシアに相応しい場所ですが、どうにも人数が少なすぎます。
信用できる人間が少ないのが全ての原因ですが、急に改善は不可能です。
家臣の子弟子女を近づけたら、密偵を自分で近づけるのと同じですから。

「ネイちゃん。
次はこれを覚えようか」

「これを覚えたらママはよろこぶ?」

「ああ、とてもよろこぶよ。
だから頑張って覚えようね」

「うん!」

ウィリアムがネイに新しい魔法書を作り方を教えています。
その魔法陣の精密さに驚きを禁じえません。
どう考えても上級魔法の魔法陣です。
今迄の中級上の魔法陣とは違い過ぎます。
このようなモノを創って、ネイの負担にならないのでしょうか?

「ちょっとウィリアム。
ネイの負担にならないでしょうね。
ネイに無理をさせたら貴男でも許さないわよ!」

「だいじょうぶだよ、ママ。
ネイ元気だよ。
ネイママの役に立てるよ」

「ありがとう、ネイ。
ママはうれしいわ。
でも同じくらい心配なのよ。
少しでも痛かったり苦しかったりしたら、直ぐに言うのよ」

「はい、ママ」

私が心配すると、輝くような笑顔を向けてくれます。
言葉にできないほどのよろこびが、心の奥から湧き出してきますた。
思わずギュッと抱きしめてしまいました。

「ママ、ママ、ママ。
ずっと一緒だよね?
黙っていなくなったりしないよね?」

「大丈夫よ。
ずっとずっと一緒よ。
黙っていなくなったりはしないわ。
もしどうしても離れ離れになるときは、ティシュトリヤと一緒に逃げなさい。
必ず私のいるところの連れてきてくれます。
分かりますね」

「はい、ママ」

「おい、おい、おい。
ここは俺達と一緒に逃げろというところだろう」

今まで黙っていたイライアスが会話に加わってきました。
確かにイライアス達にはずいぶん助けられました。
でもそのイライアス達に出会わせてくれたのはティシュトリヤです。
イライアス達がいない時に助けてくれたのもティシュトリヤです。

「ネイ。
ティシュトリヤの次にイライアス達を頼りなさい」

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