「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第42話

「本当にこんな高価な魔法巻物をもらっていいのか?
私達はついていくのを拒んだんだよ。
契約解除と違約金を請求していいのはあんた達なんだよ」

ダニエラが仲間達を代表して質問してきます。
確かに正式に契約書を交わした内容に従うのなら、彼女達は私を護るためについてこなければいけません。
そして契約を履行できないのなら、違約金を払わなければいけないのです。
ですが私達はその後で話し合い約束しました。
契約書を交わさない口約束ですが、約束は約束です。

「口約束とはいえ、ここに牧場を開いて支援すると話し合った。
それを護らないのは信義に反するからな。
だが現金に持ち合わせがないから、その代わりに中級下の魔法巻物を渡す。
汎用性の高い補助魔法の魔法巻物だから、高値で売れるだろう。
資金繰りが苦しくなったら売ってくれ」

「分かった。
よろこんで受け取らせてもらう。
だが私達も信用を第一にする冒険者を目指している。
そのらにいるチンピラ冒険者と同じだと思ってもらいたくない。
新たな契約を交わさせてくれ。
何かあったら命を賭けてあんたらを護る。
援軍に駆けつける契約を交わしたい」

ダニエラの言葉に、他の三人も強くうなずいています。
彼女達の決意も強いようです。
彼女達が信用信頼できるのも、サンテレグルラルズ王国内での色々な騒動で確かめています。
何よりネイを大切に思ってくれています。

「分かった。
細部の内容を直ぐに決めよう。
いつ追手がかかるかもしれない。
あれから集めた情報では、クライム国王と唯一生き残ったオリバー王子の仲が上手くいっていないようだ。
それに貴族士族の思惑が絡んで、サンテレグルラルズ王国は内戦直前の様相を呈しているという。
ネイを傀儡にしようとする者や、殺して禍根を断とうとする者が、いつ襲ってくるか分からない。
少々の契約内容の不備は緊急のためだと諦めてくれ」

「分かっているよ。
共に何度も死線を潜った戦友だよ。
直接護れなくなっても、側面支援くらいは任せてくれ」

私達は急いで魔法契約を交わした。
時に命を奪うほど強力で厳格な魔法契約だ。
普通は、公正中立な人間が間に立ってくれない限り、交わすモノではない。
よほど大きな力量差があって、奴隷契約なようなモノでもない限り、冒険者ギルドの職員が間に入ってくれる。

それに魔法契約に使う魔獣皮紙は、とても強い魔獣でなければ意味がない。
契約するモノが、簡単に跳ね返したり耐えられたるする呪いしか発動できない魔法契約書だったら、全く無意味だからだ。

「ネイちゃん。
元気でね。
私達は直接護る事はできないけれど、ここにネイちゃんが帰って来れる家を造って待っているからね」

「うん、おねえちゃん!」

年下の私がママで、ずっと年上のダニエラ達がおねえちゃん。
それだけはなんとなく気に喰わない!

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