「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第39話

ギャアァアア!

一人死にましたね。
誰かはわかりませんが、魔蠍に刺されるか両断されたのでしょう。
この魔境になれないモノが、砂の中から現れる魔蠍に対処するのは不可能です。
あのような巨大な蠍がいるなんて、エルフィンストン王国の出身者には想像もつかない事でしょう。

最初から人数は少なかったです。
ディエゴ達の時のように、二百人もいません。
三つの集団併せて六十人もいません。
三つの集団が誰なのかは想像がつきます。

一つは間違いなくダニエル王太子でしょう。
一つは兄のディビッドに違いありません。
最後の一つはマルティンです。
ディエゴとアレハンドロが死んでいますから、私を冤罪で殺したいのは、夢に出てきたのは、ダニエル王太子と兄とマルティンが残るだけです。

魔法で索敵できるのは人数と位置だけで、個人の特定は不可能です。
数で想像するのも難しいです。
王太子だから一番人数が多いとは限らないからです。
恐らく国には無断で私を殺しに来ています。
ディエゴとアレハンドロの襲撃事件は、大問題となったはずです。
そんな状態で私を殺しに行くといって、ついてきてくれる家臣は限られます。

次期宰相でしかなく、直接の配下や家臣を持たない兄の人数が一番少ないとは思いますが、金で傭兵や刺客を雇っている可能性もあります。
普通に考えれば、次期左将軍で騎士隊長として騎士隊を指揮する、マルティンの集団が一番人数が多いと考えられますが、信望がない可能性もあります。
いちいち確認していては隙が生まれるので、確認なしで罠に嵌めています。

魔法索敵に、魔砂蟲が映っています。
これで彼らは全滅するでしょう。
魔砂蟲は、素人にはとても恐ろしい魔蟲です。
魔砂蟲は、縄張りに入った動物の血を吸い肉を喰らい生きています。
空腹時の体長はとても細長い二メートルで、体重は四キログラムほどですが、鋭い口で喰いつき血を吸い肉を喰らうのです。

魔砂蟲の食欲は旺盛で、餌があるなら、元の体積の百倍まで喰いだめします。
そして恐ろしいほどの数の子供を生むのです。
もし魔境の外にでられたら、人類の脅威になるのは間違いありません。
まあ、どの魔蟲も魔獣も、自由に魔境から出ることができていたら、人類は大昔に滅んでいたかもしれません。

私達は魔法防御で防いでいましたが、聖女達はどうでしょうか?
最初は魔法防御が展開できていても、直ぐに魔力が尽きるかもしれません。
これで死に絶えてくれたら、自分の手を汚さなくてすみます。
直接復讐したい気持ちはありますが、殺されたのは夢の中だけです。
襲おうとしているのは明らかですが、まだ直接攻撃されたわけではありません。
さすがに王太子を襲われる前に殺すのは問題があります。
魔砂蟲に喰い殺されてくれればいいのですが……

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