「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第9話

私の疑問から、話が大きく動きました。
拠点をエルフィンストン王国から、大魔境と大ダンジョンが近接するサンテレグルラルズ王国に移すことになりました。
私としては、追っ手のかかるかもしれないエルフィンストン王国から出ることになって、ひと安心でした。

移動を決断したのには、いくつかの要因があると聞きました。
ひとつは私がパーティーに加わったことで、総合戦闘力が格段に上昇した事。
ひとつは私が手持ちの素材で中級上魔術巻物を創りだせたことで、初級下と初級中の魔術巻物を売って莫大な利益を手に入れることができた事。
エルフィンストン王国の王都に行っても、魔術巻物の販売で大きな利益を上げる事ができる事でした。

心配していた関所も無事に越えることができ、旅の途中でも狩りを行って素材や食材を集めて、休憩の日に魔術巻物を創り出して資金を得る。
そんな時間のかかる旅を三カ月する事で、私たちは息の合ったパーティーになることができました。

「私は暁の騎士団という冒険者パーティーの代表なのだが、今日から王都に拠点を移し、大魔境と大ダンジョンに挑みたい。
登録をお願いしたのだが」

「承りました。
以前この国で活動されたことはありますか?」

「以前ここでも狩りをさせてもらったことがある。
最近では、エルフィンストン王国側からここまで移動しながら、いくつかの街や村で狩りをして、そこの冒険者ギルドで認定証をもらっている。
これを確認して欲しい」

「分かりました。
確認させていただきます。
な、白銀級ですか!
これはお見逸れいたしました。
以前ここで登録されていた時は、パーティーで金級でしたのに、この短期間に二階級昇格とは素晴らしい!
魔法使いが加入されたのですね?
物理特化パーティーからの脱却が躍進の理由でしょうか?
新たな冒険者証を発行されますか?
他の街で発行された白銀級でよろしいのですね?
いえ、この国で活動される限り、それで問題はありません。
ただ念のためですが、パーティーメンバー全員と面接させていただきます」

私たち七人は、サンテレグルラルズ王国の王都を拠点とすることにしたのです。
王都は隣接する大魔境と大ダンジョンの両方を活用できる場所にあります。
そもそもサンテレグルラルズ王国は、大魔境と大ダンジョンの恵みによって建国され、発展してきた国なのです。
国の中心が大魔境と大ダンジョンなのです。
都市自体の発展性を無視してでも、大魔境と大ダンジョンを隣接地に王都を置くしかなかったのです。
そして今も、多くの国から一獲千金を目指して、腕に覚えのある冒険者が集まってきます。
同時に、そのおこぼれに預かろうとする者も集まってくるのです。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品