奴隷魔法使い

克全

第30話蛇竜

『多摩奴隷千人砦・個室』

「タケル、今日の雨は結構激しいね」

「そうだね。湿地帯ならこれくらいでも安全に狩れたけど・・・・」

「魔境は大丈夫な?」

「きりと殿に確認したうえで、狩りに行くか休みにするか決めよう」

「うん、それがいいね」

『多摩冒険者組合』

「おはようございます、きりと殿。きりと殿、この雨は狩りに影響ありますか?」

「はい、影響が出ます。これくらい雨が降ると行軍に時間がかかり、ヒル等の被害も出ますし、風邪などの病気になる確率も増えます。ただ良い面もあります。雨の時にしか出ない魔獣が出てきます。特に竜は、大雨で天に登るとさえ噂されています。ですから竜を狩る覚悟が御有りなら、今日はチャンスです」

「分かりました。志願者の中から、この雨でも行軍できる人を選抜してください。受付殿、撒餌代の2000銅貨です」

「タケル殿、四十三名が行軍可能です」

「では出発します」

『魔境と奥山の境界線』

なんだ?

でけ~蛇か?!

「タケル殿! 凄いのがいます!」

「ほう、そんなにすごいのですか?」

「いや、私も実物は初めて見ますが、あの鱗は一度だけ貴族出身の冒険者が持っているのを見せてもらいました。あの鱗は蛇竜の鱗です。この国では百年前に狩られたきりで、今は金持ちが外国から輸入しているものだけです。あの鱗を鎧や盾に使えば、達人が鋼剣や日本刀を使って攻撃しても、鎧や盾に傷一つ付けることも出来ません。魔法耐性も強く、中級上の魔力では傷つけられません!」

「では、買取値は魔竜級ですか?」

「それは・・・競売なら純血種竜並みですが・・・・王国奴隷のタケル殿だと、規定値は亜種竜価格が制限値です。いや、そもそも魔法が効きません! ましてここにいる戦士の剣と腕では、傷すらつけられません。無駄骨でしたがこういうことも有ります」

「試してみます。狩れたら平民になるまで魔法袋に保管しておきます。アヤ、蛇のように死んでも暴れるかもしれない。合図したら重力魔法で浮かせてくれ」

「了解、任せて」

さて、どうする?

シュミレーションしていたように狩るか?

圧縮風魔法や火魔法を、鼻や口から体内に入れて爆発させれば・・・・・

しかし、技を冒険者に見られると真似されるか?

そうだ、霧を発生させよう!

冒険者達には目隠しして倒そう。

「タケル殿、霧です」

「僕が出しました。蛇竜に対する目晦ましです」

何時もの十倍の魔力を込めて、圧縮強化風魔法弾を作ろう。

数は一つ!

口から入れると、脳に届く前に舌に当たって破裂すると不味い。

鼻から脳を狙おう。

よし、上手くいった!

脳髄を破壊できた!

「アヤ、殺った。浮かせてくれ」

「了解。結構重いね。四トンくらいあるかも」

『きりと視点』

おいおいおいおい、此奴は化物か?

いや、上級魔術師とは凄いんだ!

そうだな。

大陸からは蛇竜の鱗は輸入できているんだ。

決して誰にも狩れないわけじゃない。

今まで王国に上級魔術師がいなかったから狩れなかっただけだ。

これからは自国で蛇竜鱗が手に入るようになるんだ!

「きりと殿。蛇竜が動かなくなったら、魔法袋に入れます。魔力が余っているので、しばらく待ち伏せしてみますから、雨避けのテントを張って食事してください」

「了解しました。野郎ども、テント張って飯だ。周囲の警戒は忘れるな!」

「「「「「うわ~」」」」」

「「「「「凄げ~」」」」」

「「「「「本物の竜だよ」」」」」

「「「「「蛇竜なんで初めて見たよ」」」」」

「てめ~ら、餓鬼みたいに騒ぐんじゃね~。蛇竜のことは秘密だ! タケル殿の不利になるようなことは一切喋るな!!

「「「「「分かりました、きりと殿」」」」」

「アヤ、気配は分かるかい?」

「うん、昨日の魔猿かな?」

「正解だ。アヤ、魔力半分で四十五頭倒せる?」

「大丈夫。倒せるけど、四十五頭が目標?」

「そうだよ。俺は八十五頭を目標にする! よし、最大射程から順次狩る!」

『奴隷冒険者砦』

「小人目付殿、買取お願いします」

「よし出せ」

「魔猿百三十頭です、魔晶石はこちらで使いまます」

「よし、魔猿百三十頭、十万三千二百九キログラムで百三十二万九百銅貨だ」

「はい、ありがとうございます」

「皆、組合で給与支払います。明日は魔具の研究でお休みにします」

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