「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第65話

「ノドン子爵閣下、ミルド子爵閣下、重大な情報が入りました」

自由戦士ギルドの総帥が、わざわざゴードン公爵邸にやってきました。
よほど重大な事が起こったのだと分かります。
私だけでなく、オウエンも緊張しています。

「そうですか、直ぐに聞かせてください」

「まだ絶対ではありませんが、根も葉もないと否定もできない事なのです」

前置きが長いです。
よほど重要な事なのか、持ってきた情報の価値を高めたいのか。
元は誇り高い自由戦士でも、今は大組織の長です。
組織を護り自由戦士を護るために、少々の駆け引きくらいは平気でやるでしょう。

「分かりました。
そのつもりで聞かせてもらいましょう」

「コーラル家のアーレンが生きているという情報が入りました。
今も情報を集めていますが、かなりの確率で、本物だと思われます」

私もオウエンも全く驚いていません。
あのアーレンが簡単に死ぬなどとは思っていなかったのです。
アーレンに関しては何度も話し合いました。
生きていた場合も死んでいた場合も、報復をしようとしてきた場合も考えて、慎重に行動してきたのです。

「よく調べてきてくれましたね、感謝します。
ですが、私達もアーレンが生きていた場合の対応策は話し合っています。
本人であろうと残党であろうと、私達を攻撃してきた場合の対応策も話し合い、常に攻撃してくると考えて護衛を用意しています。
ただ総帥が集めてきてくれた情報をもとにして、新たな護衛計画を立てます。
総帥には引き続きアーレンの情報集めをお願いします。
これまでの情報収集に対する費用を、明細と一緒に送ってください」

「承りました。
ですが殺してしまわなくてよいのですか?」

総帥はどうしたいのでしょう?
引き続きの情報収集を頼んだのですから、仕事の依頼が発生しています。
ノドンダンジョンと命名された新発見ダンジョンから、莫大な手数料が手に入っているのですから、我が家からこれ以上の大金を手に入れるつもりはないはずです。
恩を売って、ダンジョン管理の権利を確実にしたいのでしょうか?
確かに数多くの冒険者ギルトから、好条件で管理を任せて欲しいと言われていますが、信用信頼からいえば、自由戦士ギルド以上の組織はありません。

「心配してくれるのはありがたいですが、余計な事をして、これ以上の敵意を持たれても困りますから、当面は情報取集だけにしておいてください。
アーレンが積極的に私を狙わない限り、こちらから手出しはしません。
自由戦士ギルドを誘致したことで、恨みを飲み込んだ可能性もありますから」




コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品