「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第51話

「おい、おい、おい。
散々ノドン男爵とミルド男爵を脅した君がそれを言うのかい。
それはむしがよすぎるね。
これまでの君のやり方は、すべて大陸中に流させてもらうよ。
裏社会では影響がないかもしれないけれど、表社会ではどうかな?」

「私の負けでございます、レイズ卿。
レイズ卿の出される条件を全面的の受け入れますから、荒地の開拓民と鉱山労働者を今まで通り働かせてください」

「それはダメだよ。
これまで散々あくどい真似をやってきたんだ。
その報いは当然受けるべきだよ。
彼らは元の流民として、差別と攻撃を受けるしかない。
全ては君の強欲のせいだよ」

「彼らに荒地で籠城させるつもりですか。
それとも、彼らに隣国の侵攻軍に加われと言われるのですか?」

「また脅迫かい?
彼らも可哀想だね。
彼らを入国させたら、その国でも我が国のように脅かし、籠城や侵攻軍に加わると知れたら、大陸中の国が絶対に入国させないだろうね。
本当に可哀想だ。
入国しようとして虐殺される彼らの姿や、籠城しようとして自由戦士に殺される姿や、加わった侵攻軍で後ろから攻撃される姿が思い浮かぶよ」

「私にどうしろといわれるのですか?」

「彼らを連れて出ていってくれればいいんだよ。
散々我々を脅し利用し苦しめてきたんだ。
今さら慈悲を求めても無駄だと分からないのかい?
君達のような薄汚い連中が国内にいては、侵攻軍との戦闘中にいつ背中から襲われるか分からないからね。
素直に出ていかないと、彼らの期待の星、自由戦士まで追手が送られるよ」

「なに?!
どう言う事だ!」

「おい、おい、おい、おい。
なにをとぼけているんだい。
このような脅迫恐喝に加わった自由戦士を、自由戦士ギルドが許すと、本気で思っているのかい?
自由戦士ギルドは、この脅迫恐喝に加担していると思われたくないのだよ。
それを証明するためには、討伐隊を送るしかない。
もしかしたら、もう二人には追手が送られているかもしれないね。
開拓民と鉱山労働者の君への恨みは、激烈なモノになるだろうね」

兄上は本当に怖い方です。
アーレンをここまで追い詰め脅かしているのです。
アーレンの顔色はまるで死者のように真っ青です。
でも、それも当然でしょうね。
全てが兄上の申される通りなら、アーレンは開拓民と鉱山労働者に命を狙われる事になります。

それだけではなく、開拓民と鉱山労働者の一族から出た自由戦士からも、命を狙われる事になるでしょう。
本当に兄上は恐ろしい方です。
私達の子供には、私やオウエンと違って、謀略も使えるようになって欲しいと、この場に連れてきましたが、ちょっとやり過ぎたかもしれません。

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