「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第48話

「ようやく私の出番が回って来たようですね。
私からも傭兵を紹介させていただきますよ、ノドン男爵閣下、ミルド男爵閣下」

兄上が屋敷に帰られるのを待ちかねたように、アーレンがやってきました。
裏世界にも大きな影響力を持つアーレンです。
兄上同様この屋敷を見張っているのかもしれません。
油断も隙もない相手です。
本当は交渉なんてしたくないのですが、強い傭兵が欲しいのも確かです。
ですが、裏切るような傭兵なら絶対にいりません!

「アーレン。
状況が分かっているのなら、そう簡単に引き受けられないはずだぞ。
圧倒的に不利な状況で籠城するんだ。
それでも裏切らない傭兵など滅多にいないぞ」

オウエンが厳しく問い詰めます。
私も同じ気持ちです。
私達の命だけではないのです。
アレクサンダーとお腹の子の命もかかっているのです。
いい加減な返事をするようなら、今度こそ殺してもらいます。

「荒地を開拓している者と、荒地で鉱物を掘っている者に、領地を認めてやれば、必死になって護りますよ。
異国で働いている一族の者も、戻ってくるかもしれません。
なかには隣国で暴れてくれる者もいるかもしれません」

そういう事ですか。
確かに自分の領地となれば、命懸けで働くでしょう。
ですが、それでは、ノドン男爵家とミルド男爵家の勝手向きが悪くなります。
荒地の収入を当てにして、自由戦士を雇うつもりなのです。
その事を分かっていて、有利な交渉をしようというのでしょうか?

「その必要はない。
荒地の収入で自由戦士を雇う。
自由戦士には友人知人の傭兵を紹介してもらう予定だ。
彼らが望むのなら、荒地を領地に与えて武官家臣にしてもいい。
だからいつ裏切るか分からない裏世界の傭兵は不用だ」

オウエンが厳しく指摘してくれました。
私の言いたいことを全部言ってくれました。
思わずお腹をさすりながら、乳母が抱いてくれているアレクサンダーを見てしまいます。

「では、これではどうでしょう。
荒地に住んでいる者の家族に、自由戦士がいて、彼が味方する代わり、荒地を領地に認めて家臣にするのです。
これなら荒地に住む者達も、ノドン男爵閣下も、ミルド男爵閣下も利があるのではありませんか?
それどころか、ゴードン公爵家にも王家にも利があるのではありませんか?」

どういう事でしょうか?
裏世界に内通している自由戦士がいるという事でしょうか?
それとも、偽者の自由戦士なのでしょうか?
確かにアーレンの話が本当ならば、荒地を家臣となる自由戦士に与えても問題ありませんが、何か裏があるのではないでしょうか?

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