「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第47話

「王都では迎え討たない。
王都に邸宅を持つ貴族士族が裏切る可能性が高い。
王城も同じだ。
寝返りが起こる場所での籠城は不可能だ。
王族を一人領都に迎えて籠城するつもりだ。
だが領都だけで全ての敵を迎え討つのは難しい。
裏切りが出るのが分かっていても、王都でも籠城してもらう。
だからノドン男爵家も自分の領都で籠城してもらう」

そういう話ですか。
裏切り者の大身貴族や敵国を牽制する貴族家も必要なのですね。
確かにその通りです。
ノドン男爵家が一国の軍勢をひきつける事ができるれば、この国が生き延びる事ができる可能性が高くなります。
だからこそ、私とオウエンに覚悟を求めたのですね。

「レイズ卿。
私がノドン城に籠城して、閣下にはゴードン城に避難して頂く事は可能ですか?」

驚きました。
オウエンが私の側を離れる気です。
この国を見捨てて、私を連れて逃げる決断をすると思っていました。
男爵となった責任感でしょうか?
それとも、アレクサンダーとお腹の子に、爵位と領地を残してやりたいからでしょうか?

いえ、そんな事は些細な事です。
私や子供達が死んでしまったら、何にもなりません。
勝てると思っているのでしょう。
兄ほどの策略家が、逃げ出さずに籠城するというのです。
兄ならば、勝ち目がなければ他国に亡命して捲土重来をきすはずですから。

「そこまで必死にならなくてもいいよ。
覚悟は決めてもらったけど、家臣にノドン城を任せて、ノドン男爵とミルド男爵はゴードン城に入ってくれていいよ。
ただし、ノドン城を任せる相手は、六竜騎士クラスの猛者にして欲しい。
そんな家臣を召し抱えられない時は、オウエンにノドン城に入ってもらう」

兄上らしいですね。
回りくどい愛情の示し方です。
ゴードン公爵家の次期当主として、聖騎士の近衛騎士団長として、王家王国に対する忠誠心と家臣領民に対する責任を果たしたうえで、最後に家族に愛情を示してくれるのです。

「それでレイズ卿は自由戦士を雇えと言われたのですね?」

「そうだ。
金はかかるが、六竜騎士並みの戦闘力を持ち、契約者を裏切らない戦士を雇うには、自由戦士ギルドに紹介してもらうしかないからな。
ゴードン公爵家も依頼を出しているが、肝心の自由戦士がこの危険な状況で引き受けてくれるか分からない。
色々と名を売ったノドン男爵と、六竜騎士の名声があるミルド男爵が依頼を出してくれたら、ゴードン公爵家では受けてくれなかった自由戦士が、引き受けてくれるかもしれないからな」

兄上は何を言っているのでしょうか?
私に名声などないのに。

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