「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第43話

「さあ、お腹一杯になったらゲップをして眠りましょうね」

「アレクサンダーは眠ったのかい?」

「はい、兄上。
アレクサンダーはよく乳を飲んでよく寝てくれます。
きっと大物に育ってくれます」

「それはとても楽しみだね。
オウエンのような、六竜騎士と評される武勇の士になってくれたら、ゴードン公爵家としても助かるよ」

私がアレクサンダーを生んでから、兄上がよく屋敷をたずねてくれるようになりました。
そのお陰で、貴族家が我が家に一族を訪問させることがなくなりました。
兄上に睨まれるのを恐れたのでしょう。
我が家としたら、これほど助かる事はありません。

「兄上も六竜騎士と称されておられるではありませんか。
ガンツ達も兄上を目標に武芸に励んでいるのではありませんか?」

兄上にはたくさんの子供がいます。
本来なら一夫一婦制の我が国において、異例なほど愛人を抱え、庶子をもうけていますが、本来ならガンツ達本妻の子が後継者として優先されます。
これは先妻が死んで後妻が入っても同じです。
先に生まれている先妻の子供が優先されます。
まあ、陰では絶対ではないのですが……

「そうだな、確かに頑張ってはいる。
だが、本妻や妾、生まれた順に関係なく、優秀な者を後継者にする。
武芸だけでゴードン公爵家を継がせる気はない。
謀略や統治の能力も評価する。
武芸一辺倒の子供は、分家させるか武官家臣の家に養子にやるかするよ」

兄上らしいと言うべきか、それとも常識外れと言うべきか、難しいところです。
四大公爵家時代ならば、他の公爵家に攻撃されることを恐れて、今のような大胆は発言はされなかったでしょう。
グラント公爵家がここまで力を落としていなければ、もっと慎重な発言をされたと思います。

ですが今なら、兄上は自分の理想通りの行動ができます。
少なくともゴードン公爵家の後継者選定は、能力優先にされるでしょう。
ガンツ達本妻の子が可哀想な気がしますが、今の王国の現状を考えれば、ゴードン公爵家を無能な者に継がせるわけにはいきません。

「それでノドン男爵家の陞爵とオウエンの男爵叙勲なのだが、いくら出せる?」

やはりこの話でしたか。
先の貴族家一族の訪問を考えると、オウエンの男爵叙勲は必要な事です。
これから生まれる次男三男の事も考えたら、もう一つ男爵の位があっても無駄ではありません。
領地に関しても、荒地も含めて二つの男爵家には十分な広さがあります。
問題は私の子爵陞爵ですが、どうするべきでしょうか?
オウエンと同じ男爵の方が夫婦仲に問題を起こさないのでしょうか?
それとも、私の方が常に爵位が上の方がいいのでしょうか?

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