「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第29話

「オリビア母さん。
オウエンと結婚したいのですが、邪魔は入るでしょうか?」

「今のところ邪魔が入るとは思えません。
それなりの所には事前に話を通していますが、問題ありません。
ゴードン公爵家は没交渉となっていますから、問題ありません。
グラント公爵家は、多少言いたいこともあるようですが、ここまで来て我が家と敵対して、オウエンやロバーツ第二王子と敵対する気はないようです」

私はオウエンと結婚する決断をしました。
実家とは既に話がついていましたし、王家も納得しているようです。
ここで騒ぎ立てて、オウエンや兄オウエン卿を怒らせて、イーサン王太子を殺すような事にはしたくないようです。
ロバーツ第二王子も兄殺しの汚名を着たくないけど、愚かな兄に実権を渡す事もできず、苦しんでいたと伝え聞きますから、事が全て上手く転がったのです、今は何事も穏便に済ませたいのでしょう。

「ではできるだけ早く手続きを終えてください。
いつどこで予想外の事が起こるか分かりませんから」

「重々承知しております」

私達三人は顔を見合わせて苦笑しました。
本当にいつどこで何が起こるか分からない人生です。
今もどこかで私達があずかり知らなところで、誰かが悪事を企んでいるか分からないのが、この世の仕組みなのでしょう。
面白いというべきか、苛立たしいというべきか。

今日はオウエンがとても大人しいです。
六竜騎士なのですから、望まれて貴族に婿入りすることは当然なのです。
もっと堂々と振舞ってくれればいいのですが、公爵令嬢と守護騎士だったという関係は、いつまでもどこかに現れるかもしれませんね。

でもそれこそが、オウエンと私の歴史なのです。
積み重ねた過去があるからこそ、今の私達があるのです。
それを無視して、よくある普通の夫婦になる事はできないのでしょう。
そしてそれが、私達の愛情に味と彩を与えてくれるかもしれません。
でも、物語に書かれているような、騎士らしい堂々とした態度で、愛を宣言して欲しと思ってしまいます。

「オウエン。
私の事を愛してくれていますか?」

オウエンが一瞬たじろいでしまいました。
オリビア母さんの前で、このような事を口にするとは思っていなかったようです。
でもどうしても聞きたいのです。
他の人がいる前で、堂々とした愛の言葉、宣言を聞きたいのです。
オリビア母さんが笑顔を浮かべかけて、急に真剣な表情に変わりました。
私が本気で愛の言葉を聞きたいと思っているのを理解してくれて、オウエンが照れたりふざけたりしないように、気を配ってくれたのでしょう。

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