「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第28話

「ヒッヒヒヒヒーン」
「メッエエエエエ」

屋敷の敷地に多くの動物が集まっています。
私とオウエンが同行して、直接確認した動物達です。
毛を刈るにしても、乳を搾るにしても、肉にするにしても、購入代金分の価値があると思った動物達です。
今は屋敷の者達が担当を決めて世話をしています。

年老いた牝馬に関しては、オウエンが世話をしています。
動物好きのオウエンが、自分を戦士、いえ、家令として選んでくれた牝馬です。
もう子供を生むのは難しいと判断され、肉にされるようとしていました。
ですがオウエンは妊娠出産死を前提に、自分の愛馬と種付けさせるようです。
死んでしまったら、その時に肉と皮をとれば、購入金額の元は取れるという、冷酷非情な判断です。

普段の優しいオウエンとは違う、戦争中の騎士や戦士の、家を維持しなければいけない家令の判断です。
他の山羊や羊も同じ判断基準で購入しました。
死を覚悟で妊娠させて、少しでも購入資金の回収を図ります。
そうしなければいけないほど、我が家の資金繰りは厳しいのです。
まあ、またこの国を逃げる事も考えているからですが。

ただ、それなりの数の動物が、屋敷の庭に放し飼い状態ですのですので、庭園の美観を維持するのが難しいです。
庭の草花を食べてしまいます。
それを防ぐためには、動物達が美味しいと思える餌を、大量に集めてこなければいけません。

自前の領地がないので、王家が王都の民に開放している森、特に民が入るのを躊躇う魔の住む森で集めなければいけません。
そうでなければ、王都の民から我が家が非難されることになります。
民が入れない危険な森なら、入って大量に餌を集めても、非難されることは少なくなくなります。

ただ全くなくなりはしません。
とにかく何でも非難したい人はいます。
特に何も考えず、全ての出来事に不平不満を言うのです。
不平不満を言う事で、自分達が被害を受けることになっても、その事はその時にまた非難するのです。
その時に被害を受けた人を扇動して、自分達がその被害を生みだしたことは隠蔽して、新たな被害者を生みだし、利益を得ようとするのです。

「閣下、今日の入札メンバーが集まりました。
昨日より人数が増えております」

「それでも今日もアーレンが落札するのかしら?」

「分かりません。
冒険者の間でかなり評判が高まっているようです。
それと、アーレン独自の販売網があるのでしょう。
市場に残る薬が減れば減るほど、市場価格は高くなります」

「本当に上手く値を釣り上げましたね。
これでは庶民が手に入れることができなくなります」

「ですが閣下。
これまで高値だった並の薬が値崩れしております。
その分庶民が薬を手に入れやすくなっています」

オウエンの言いたいことは、頭では分かっているのですが、心がモヤモヤしてしまいます。


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