「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第20話ゴードン公爵家王都屋敷の出来事2

「そうだったな。
ノヴァ嬢は客人であったな。
その客人が私にどのような願いがあるのかな?」

「実はこの国で爵位を購入したいと思っていますの。
男爵位ならお金をだせば買えると聞いております。
その手続きをお願いしたいのです」

「ノヴァ嬢。
それはゴードン公爵家との縁を切るという事かな?」

「おかしなことを口にされますね。
既に縁は切れているでしょ。
今は縁など何もありませんわ
今回も剣で脅かされて無理矢理拉致されてきたのです。
この件に関しては、国王陛下に訴え出るつもりです」

「そうか。
ではこのまま拉致を続ける。
男爵位を買う手続きもしないと言ったらどうする」

「どうも致しません。
このまま機会を待つだけでございます。
グラント公爵が救いの手を差し伸べてくれるでしょう」

「イーサン王太子殿下の処遇もこちらの望み通りになるだろう。
ノヴァ嬢が望むのなら、ゴードン公爵家に戻る事も可能だ。
王太子ほどではないが、それなりの家に嫁ぐ事もできるだろう。
それを全て捨てると言うのか?」

「馬鹿げたことを言われますね。
全てグラント公爵の利益になる縁談でしょう。
ゴードン公爵の道具に戻る気など、毛頭ありませんよ。
邪険に扱った道具にも、魂も誇りもあるのです。
再び道具に戻るくらいなら、命懸けで戦うだけです。
差し違えることになっても、お命頂戴したします」

ノヴァ嬢の言葉と同時に、晩餐の場が凍り付いた。
事もあろうにゴードン公爵を殺すと公言したのだ。
ゴードン公爵の護衛達が一気に緊張した。
ノヴァ嬢が宣戦布告した以上、守護騎士オウエンと本気で戦う事になる。
どれほど腕利きの護衛でも、いや、一定以上の実力がある護衛だからこそ、六竜騎士と称えられるオウエンの実力が理解できた。

そして同時に、公爵家の後継者であるレイズの動向が気になった。
オウエンと同じ六竜騎士と称される実力者だ。
父親の技を受け継ぎ、双剣の名手となっている。
それだけではなく、近衛騎士団長を勤め聖騎士を称号まで得ているのだ。
そのレイズが父親の味方をするのか、妹の肩を持つのかで、その場で生き延びる人間が変わってくる。

レイズが父を押しのけ、公爵家で力を振りたいと考えているのなら、これは絶好の機会だった。
双剣大将軍と呼び称えられ、六竜騎士以上の実力者といわれていても、六竜騎士二人を同時に相手にできるとは思えない。
この場にいる者全員が、レイズの言葉、レイズの行動に釘付けになっていた。

「父上。
ひと言よろしいでしょうか?」



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