「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第18話

「オウエン。
貴男は長年父上の下で戦ってきましたね。
少しは父上の気持ちが分かるでしょう。
父上はいったい何を考えておられるのでしょう?」

「私にも閣下のお考えは完全に理解できません。
ただ今迄なされてこられた軍略から判断すると、イーサン王太子を塔に閉じ込め、お嬢様との婚約も破棄されるつもりだと思われます」

私もそうではないかと思っていたのですが、オウエンの言葉で安心できました。
父上は私を色情狂から解放してくださるつもりなのでしょう。
その覚悟で、ミレイと繋がったままの色情狂を晒し者にしたのでしょう。
建国王の定められた基本法があるので、色情狂のイーサン王太子が国王になる事は変えられないというのが、父上の考えなんでしょう。

ですが、一切の権限を与えず、子孫も残させず、寿命が尽きるまで幽閉する。
そして実際の政務は、摂政になられたロバーツ第二王子に担っていただく。
次期国王も、ロバーツ第二王子の子供についていただく。
これが父上の最初からの考えだったのでしょう。
ですが、それを阻むモノがあったのです。

この国は、四大公爵家が力を持っています。
そのなかでも、我がゴードン公爵家とグラント公爵家が、シャノン公爵家とボイル公爵家よりも有力です。
ですが、言いなりにできるほどの差があるわけではないのです。
ボイル公爵のように、密かに父上を追い落とそうとしている者もいるのです。

だから父上は、自分の考えを隠して、多数派工作をしたのでしょう。
隙あらばシャノン公爵家とボイル公爵家を叩き潰す準備を整えたうえで。
実際問題、今回の恥さらしな行動で、ボイル公爵家の没落が確定です。
完全に潰されるのか、降爵にすませるのかは分かりませんが、降爵ですんだとしても、これほどの不名誉を民にまで知られたのです。
二度と再び権力を取り戻すのは不可能です。
シャノン公爵家も父の顔色を見て行動する事でしょう。

「オリビア母さんはどう思いますか?
私はどうすべきだと思いますか?」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
閣下がどのような決断を下されても、私とオウエンの覚悟が変わるわけではありませんよ。
閣下の決定が納得できなければ、また一緒に逃げるだけです。
ノヴァはその覚悟と準備をしていてくださればいいのです」

「そうね、ありがとう。
二人の忠義には感謝しています」

「それは違いますよ。
忠義ではなく愛情です。
私達は愛情で行動を共にしているのです。
もし公爵家に残ることになっても、それに変わりはありません」

私は幸せです。
決めました。
誰が何と言ってもオリビアを母親として遇します。
オウエンには私の夫になってもらいます。

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