「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第13話

「私はここです!
殺したければ、子供たちを放してここまで来なさい!」

「誰がそんな手に引っかかるかよ!
子供を放したら小屋に逃げこむつもりだろう。
カチュアがここまで来い!
さっさと来なければ子供を殺すぞ!」

「いい度胸ですね。
邪竜退治の英雄様たちの屋敷を襲い、門番を殺し、養い子を人質にしたのです。
主人共々殺される覚悟をしたのですね」

「ふぇえ?
なんだと?
なにを言っていやがる。
ここはカチュアが雇われた冒険者の拠点だろうが!」

「愚か者ですね。
誰にだまされて踊らされているかは知りませんが、その冒険者というのが、邪竜退治の英雄様たちなのですよ。
貴族たちに大恥をかかせた私を助けてくださる方が、他にいるとでも思っているのですか?」

「ちい!
仕組まれたか!
だがここで何もせずに帰る事もできん。
男は度胸よ!
カチュア、お前を殺して後は運を天に任せる。
お前たちは人質の子供たちを確保していろ。
俺がカチュアを殺す。
おい、カチュア。
そのまま動くなよ。
動いたら子供を殺すからな!」

やれやれ、本当に卑怯な下衆野郎ですね。
本当はこの手で成敗してやりたのですが、護身術を齧った程度の私では、とても勝てそうにありません。
こんな腐れ外道どもでも、家臣団の中では腕利きなのでしょう。

徐々に近づいてきます。
私が恐怖にかられて逃げ出さないように、気をつけているのでしょう。
ですがその慎重さが私のチャンスになります。
配下の者たちの視線も、私と指揮官に向けられています。
今なら不意をつけるでしょう。
歴戦の戦士ならという条件は付きますが。

「死ね!」

刺客の指揮官が、私に向かって剣を突き立てようとしました。
ですがそれは不可能でした。
私を護る護衛兵たちが現れて、逆に指揮官に剣を突き立てたからです。
この屋敷の敷地内には、多くの罠が仕掛けられているのです。
その一つが、地面に埋められているスケルトンです。

しかしただのスケルトンではありません。
ルーカス様たちが創り出されたスケルトンです。
人間の骨や怨念を利用したりはされません。
狩った魔獣の骨や角、牙や爪を素材にされ、核は魔獣の魔核をそのまま流用されているのです。
売ればそこそこの利益になるのに、私たちのために護りに使ってくださいます。

そのスケルトンの一種が私の盾となってくれています、姿形から魔狼の素材から創り出されているのでしょう。
刺客の指揮官は、五体のスケルトンにめった刺しにされて絶命しています。
配下の刺客たちは、地面から突き出されら数十の槍に突き上げられ、すでに絶命しています。
ルーカス様たちが報復を遣り過ぎなければいいのですが……


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