「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第5話

私が難産で死にかけたと伝えても、エイデンは会いに来ませんでした。
高位貴族に招待されて忙しいと、使いを寄越すだけでした。
私がベッドから起きれるようになるまで三カ月、一度も来なかったのです。
これには両親ばなりでなく、ルーカス様たちも激怒されました。
みなエイデンに文句を言おうとされましたが、私がとめました。
離婚のための理由の一つにしたいと。

今日までじっと待ちました。
難産で体調が戻らない間に、エイデンの浮気の証拠を集めてもらいました。
邪竜退治の時に戦闘斥候だった、ジョーンが調べてくれました。
大切な息子、ロディーを取り上げられないために必要な武器です。
エイデンが離婚を認めなくても、教会を味方につけることは可能です。

さらに三カ月、ロディーを生んでから半年、多くの証拠を集めました。
私が実家で療養しているのをいい事に、毎日取り換え引き換え、浮気相手を伯爵邸に引っ張り込んでいました。
私とエイデンの家である伯爵邸に、浮気相手を連れ込むのです。

最初は怒りと屈辱に震えましたが、徐々になにも感じなくなりました。
エイデン対する想いが全くなくなったのです。
私の中にあるエイデンは、道端に落ちている石と同じです。
尖っている所を踏めば痛いけれど、関わりあいにならなければ、眼に映ってもないも同然の存在です。

無視できるのなら、このまま実家で自活の道を探すのですが、そうはいきません。
伯爵の体裁を考えて、いずれは戻って来いと言ってきます。
ロディーの育児や教育に口出ししてくるかもしれません。
それだけは絶対に嫌です!
あの色魔の汚らわしい手で、愛しいロディーを触る事は許せないのです。

ようやく準備が整いました。
神明裁判での対決に備えて、見たくもない浮気現場を何度も見ました。
戦闘斥候術に優れたジョーンの手引きで、伯爵邸で繰り広げられる痴態を、浮気現場を確認したと言う、証拠のために見たのです。
証拠のためですから、確認にほんの少し見れば済むので助かりました。
ジョーンと一緒に情事の現場をみるのは、さすがに照れてしまいますから。

社交界で役に立たない侍女や庶民との浮気は無視しました。
士族と貴族令嬢との浮気も無視しました。
そこまで見ると毎日忙しすぎますので、男爵家以上の夫人との浮気に限りました。
ジョーンは生活のために狩りに行かなければいけませんし、私も逃亡準備で忙しく、全ての浮気を把握できたわけではありません。
それでも八人もの夫人との浮気現場を確認できました。

そして今日はいいよ訣別の日です。
エイデンに離婚を宣言するのです。
離婚を宣言したその脚で、魔都に向かう準備が整っています。
私はラロドリゲス侯爵主催の夜会に向かいました!





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