魔法武士・種子島時堯

克全

第283話美濃国の現状と伊勢国・志摩国始末

1548年5月:京・種子島屋敷

「じゃが、朝倉家の影響は美濃にも及んでおじゃるのだな?」

「はい、将軍家を迎え入れ種子島家と敵対した事と、六角定頼・義賢親子が美濃に逃げ込んだことで、土岐頼武・頼純親子を見捨て、土岐頼芸を支援することになりました」

「それで伊勢に攻め込んで、北畠晴具・具教を捕縛し美濃に追放したのでおじゃるな」

「六角定頼の娘を、細川晴元・土岐頼芸・北畠具教・武田信豊に嫁がせ、婚姻同盟を築いていましたから、1番弱い伊勢の北畠から攻めとることにしました。それに北畠家は、伊勢神宮の御領所・神八郡を長年押領しておりました。機会を見て攻め滅ぼすのは当然の事でございます。

そうなのだ、俺は若狭に第3軍10万兵を結集させ越前・朝倉家が身動きできないようにし、近江にも第2軍10万兵を結集させ土岐家・六角勢も身動きできないようにした。

しかも土岐頼芸の弟・頼満を毒殺し、頼芸と敵対した斎藤道三と、道三が新たに神輿に担いだ土岐頼武・頼純親子に軍資金を援助して、美濃国内で謀叛が勃発する状況を創り出した。

更に尾張・三河で勢力を伸ばし、主君である尾張下四郡守護代・大和守家や、大和守家の主君である尾張守護・斯波家をも凌ぐ勢いであった、清洲三奉行家の一つ弾正忠家の織田信秀に軍資金を支援し、美濃を牽制させた。

元々織田信秀は、土岐頼芸・頼次親子を支援していたが、尊王の志強く、俺が御上を守り朝廷を支援し、伊勢神宮の復興に尽力した事で、度々使者を送ってきていた。

朝廷や伊勢神宮を丸抱えする政策だから断ったが、伊勢神宮遷宮のための材木や銭の献上や、内裏修理費の献上を申し込んで来ていた。それ故、俺が権大納言として、神八郡でまだ取り戻していない五郡を取り返すため、軍勢を催すので美濃方面を牽制すべしと使者を送ったら、動員可能な全軍を率いて美濃に攻め込んでくれた。

主家である大和守家の織田信友などと争い、「第2次小豆坂の戦い」「第三次安城合戦」で立て続けに今川家に敗れ、西三河の支配権を失った織田信秀は、苦しい状況の中でも津島・熱田の経済力を背景に、土岐・六角連合を美濃国内に釘づけにしてくれた。

北畠晴具・具教親子と北勢四十八家に援軍が来ない状況創り出した俺は、全海軍と第1軍10万兵を動員し、伊勢群行のために整備した大道や、紀伊・大和の街道を利用して伊勢に攻め込んだ。

ここで根来寺が動いた!

津田監物算長殿とは長年の付き合いだし、将来を見通す眼力もある。俺が支配する未来でも津田家・根来寺が繁栄するためには、政教分離を徹底するか、家臣として忠誠を尽すしかないと理解しているのだろう。神仏混淆が当たり前の時代でもあり、根来寺は伊勢神宮の支配下にあると宣言した上で、奉仕の為として全軍をもって伊勢に攻め込んでくれた。

それとこれは説明の必要も無いのかもしれないが、伊勢志摩の海賊衆は、全て開戦前に北畠家を裏切り種子島家に降伏臣従した。板子一枚下は地獄の海で生きる海賊衆は、実力の違いには敏感だし、交易で種子島家との繋がりも深かった。まして隣の紀伊国根来海賊衆とは周知の中で、懇切丁寧に説得されれば降伏臣従に否やはない。

そうなると、当然ながら手柄を立てたい伊勢志摩の海賊衆は、調略を頑張り交流のある国衆・地侍を開戦前に降伏臣従させた。陸路でも紀伊国・大和国・伊賀国・近江国の種子島家家臣団が活躍し、氏族・血縁・地縁で繋がりのある国衆・地侍を開戦前に降伏臣従させた。

最終的には、北畠家と六角定頼の弟・高実が養子に入っている梅戸家などの、極少数の国衆・地侍が籠城しようとしただけだった。だが俺が何時も行う城門・城壁・土塁破壊により、籠城することも不可能となり、改めて降伏臣従を誓うか、本願寺が支配する川で守られた長島に落ちて行くことになった。

瞬く間に伊勢志摩を支配下に置いた俺は、伊勢神宮の御領所となる神八郡に所領を持つ国衆・地侍の知行替えを直ちに行った。時間が掛かっても全員と面接をし、人柄と実力を確かめ、城地を召し上げて近衛府か種子島家で召し抱える者・扶持宮侍として伊勢神宮に仕える者・神領の一代代官として伊勢神宮に仕える者に分けた。代官は世襲にさせず、俺が生きているうちに領地替えさせる予定だ。代替わりすれば、人柄の悪い者が神領を管理することになりかねず、利権として世襲が慣例になる事は絶対防がねばならなかった。

それと降伏臣従して来た伊勢志摩の国衆の配備だが、裏崩れが怖いので、種子島軍の背後に置くわけにはいかない。だから第1軍に配備し、最前線で先陣を務めさせるべく、急遽軍事訓練をほどこしたが、長年に渡る戦乱を生き抜いてきた国衆・地侍だけあって、ただ戦わせるだけなら十分活用出来る能力だった。

ただ民百姓に乱暴狼藉を働かせる訳にはいかないので、歴戦の古参家臣の与力として配備し、24時間徹底管理を行った。彼らには脅しの利かない、長島一向衆を攻める時に役立って貰わなければならない。

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