魔法武士・種子島時堯

克全

第261話吸血食人

1547年3月

四苦八苦しながら新たな治療法を探した。

大内家や一条家との関係よりも領民への責任を優先して、石見・出雲への侵攻は後回しにした。家臣団の中には同盟関係を重視して俺に諫言する者もいたが、今回の失敗だけは自分自身を許せなかった。

そしてようやく治療方法を思いついたのだが、その方法はあまりに猟奇的過ぎた。俺の口腔内に含んだ物になら魔法の効力が発揮できる、それを考えれば、患者さんの肝臓を口の中に含んでキュアの魔法を使えば治癒させる事が出来るかもしれない。

だがその現場を他人が見れば、俺が患者さんの生肝を喰らい、生き血を啜っている事になる。そんな噂が立ってしまうと、今まで営々と築いてきた種子島家の信用が瓦解してしまう

患者さんの命を助けることを優先するか、それもと全領民の信用を優先するのか悩みに悩んだ。領民の信用が失墜してしまうと、今後の天下統一が遅れてしまう。1日天下統一が遅れれば、その分餓えに苦しみ戦に巻き込まれて亡くなる人が増えるだろう。

天下統一が遅れて亡くなる人の方が、治療を断念して亡くなる人よりもはるかに多いだろう。ここは生肝を喰らうと誤解されるような治療方法は諦めて、外科的手術と魔法の組み合わせだけにしておく方が正しいのだと思う、思うのだが・・・・・

覚悟を決めて、新たな治療法を試してみた。

ただし秘密の方法が外に漏れないように、疑惑を持たれるような所だけは1人で全てを行う事にした。

患者さんの指を口に含み、魔法で麻酔をかけて眠らせた。

メスで患者さんの腹を切り開き、内臓を目視できるようにして、肝臓の門脈付近に溜まった日本住血吸虫の卵を除去した。

肝臓だけでなく他の内臓も、人海戦術で多くの医師候補生にも虫眼鏡で見ながら卵を除去させた。

内臓が飛びださないように気をつけながら患者さんを横にし、生理食塩水で取り残しの卵を体外に洗い流した。

この後は全て俺がやると医師候補生・看護兵・看護婦を手術室から追い出した。

肝臓などの重要な臓器で細胞が変質している所は、出来るだけ大きく口に含んでキュアの魔法をかけてみた。

俺の賭けは成功し、変質していた肝臓は健康な元通りの細胞に戻った。

最後はメスで切った所を併せて、そこに口をつけてキュアの魔法をかければ、見る見る切り口が癒合し、手術痕を残す事無く元通りに治すことが出来た。

この成功に心から安堵したものの、この秘密だけは死ぬまで知られる訳にはいかない。絶対に秘匿しなければならない、禁断の方法だ。

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