魔法武士・種子島時堯

克全

第244話備中侵攻前

1546年9月:備前国・津井城

「権大納言様、御初に御目にかかります、細川安房守通政でございます。これに控えますは養子の下野守通薫でございます」

「よく来てくださった安房守殿、下野守殿、しかしながら今回の侵攻は、御上の勅命を奉じたものであり、足利将軍家や管領家の権威を一切否定している。備中守護職を得ている貴君達に配慮することは出来んのだが、それを分かって会いに来てくださったのかな?」

「重々承知しております。幕府の後継問題や、応仁の乱や文明の乱を始めてする合戦に次ぐ合戦で、備中は国衆が群雄割拠する状態となりました。しかしながら尼子家の支援を受けた庄為資が力を持ち、徐々に備中を占拠する勢いとなっています」

「それで伊予宇摩郡へ逃げておられたのだな」

「情けない話ながら、備中を追いだされてしまいました。僅かに心寄せてくれている地侍の連絡で、大内家の意向を受けた毛利元就が三村家親を支援し、備中国に再び合戦が起こると知らせてくれました。そんな所に月山富田城での大内義隆殿敗北と、権大納言様の安芸制圧の話が伝わって参り、急ぎ幕下に加えて頂こうと参陣しました」

はてさてどうしたものだろう?

俺は細川家の本家と言える細川京兆家と敵対しているし、他の細川一門も滅ぼす心算だった。備中守護家は事実上断絶し、野州細川家が備中浅口郡と伊予国宇摩郡の分郡守護に任命されている。だが備中国自体が細川京兆家の直接支配地が多く、備中守護家も野州細川家もその残りを支配していたに過ぎない。

だから細川京兆家家衆と備中細川家内衆の両方に名前が見える一族がいるし、守護代を務めた事のある一族も俺が知る範囲だけで何家もある。

「守護代経験一族」
庄家
石川家
薬師寺家

「細川京兆家家衆と備中細川家内衆の両方に名前が見える一族」
庄家
石川家
薬師寺家
前田家
有岡家
上野家
斎藤家

野州細川家も敵対するなら、皆諸共に滅ぼす心算だったのだが、このタイミングでこの備前・津井城に直接挨拶にやって来ると言うのは、とても有能なのだろう。有能なのなら、使わないと言うのは国の損失になる。

「確認するが、安房守殿と下野守殿は伊予で命脈を保っておられる。ここで我の配下になると言うのは、一族の阿波細川家を裏切り三好家とも敵対する事になるが、その覚悟は出来ているのだな?」

「はい、権大納言様に御味方するのが、唯一家名を保つ方法と考えております」

「国衙領(こくがりょう)を押領して出来上がった細川京兆家は認めないし、同じように国衙領(こくがりょう)を押領して出来上がった、野州細川家の備中浅口郡と伊予国宇摩郡の分郡守護職も剥奪することになるぞ?」

「権大納言様が御上を中心にした国造りをなされているのは重々承知しておりますから、その覚悟はしております」

これだけの覚悟と先見性があるなら配下に加えても役に立ってくれるだろう。

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