第235話安芸武田家

備前・種子島家政庁（下津井城）・種子島右近衛権少将時堯・菊池石見守重次

備前を支配下に入れた際、いつものように大名・国衆の城と半知を召し上げた為、種子島家の拠点とすべき城の候補は沢山あった。その中でも備中との国境線に近く、非常時には種子島海軍の支援が得やすい下津井古城と下津井新城を改修し、２つの城を内包する巨大な城を新築していた。もちろん岩山城や神水城・川越山城にも直属部隊を駐屯させてある。

「若殿、いかがいたしましょうか？」

「罠と言う事はないか？」

「今の安芸武田家のそのような余裕はございません」

「しかしそれは参ったな、安芸武田家まで種子島家の庇護下に入れるとなると、大内家と揉めるのは必定だぞ」

「はい、種子島家の生末を決める大変なことだと理解しております、それ故申し訳なきことなれど、お忙しい若殿にここまでご足労して頂きました」

「今一度確認するが、月山富田城に逃げ込んでいた武田信実が、勝ち戦に乗じて佐東郡銀山城に戻らず、京で公家にした実家の若狭武田家に逃げ戻ったのだな？」

「実際に京にまで辿り着けたかどうかは分かりませんが、銀山城に戻って武田家を纏め大内家を攻撃しろと言う尼子の命に従わず、逃げ出したと言うのは事実でございます。残された武田家では、忠臣が武田信重殿の遺児を安国寺に匿い、御家再興を目指しております」

「一方毛利元就は武田光和殿の三男・武田宗慶を擁立して、安芸武田家を乗っ取る心算なのだな？」

「はい、尼子家・毛利家・武田忠臣が安芸国分郡（安芸郡、佐東郡、佐西郡、山県郡）守護職を巡って相争っておりますが、武田忠臣どもは若殿を頼っております」

「う～む、１日も早く天下を太平に導くには、一条家・大内家とは争う訳にはいかないのだがな」

「はい、分かっております、ただ山陽道に関しては、吉川家や小早川家をはじめとして多くの国衆地侍が、跡目争いで血で血を洗う殺し合いをしております。若殿が危険視しておられました、毛利元就が勝ち残ることになりましたら、せっかくの配慮も無駄になるのではありませんか？」

「仕方ないな、尼子の息の根を止めて、石見・出雲を大内家に引き渡す代わりに、安芸・備後・備中は種子島家が支配しよう。淡路・阿波を攻め取り東国に向かう心算だったが、毛利元就を放置するのは危険すぎる」

「安芸武田家系図」
武田元繁ー武田光和ー武田信実（若狭武田家からの養子）
－伴繁清　－武田信重ー武田太郎（安国寺恵瓊）
－高杉春時