魔法武士・種子島時堯

克全

第230話赤松右京大夫政元

京・種子島邸

「閣下、上月赤松家が頑強に抵抗しております」

「本家の左京大夫が早々に降伏して来たのに、まだ抵抗の姿勢を崩さないのか?」

畿内方面総司令長官の徳丸白虎が報告してくれるが、ここまで頑強に抵抗してくる武家は最近では珍しいことだ。本家に対する忠誠心が高いのか、それとも武士としての矜持が強いのかどちらかだろう。いあ、もしかしたら尼子家の撤退に乗じて手に入れた備前領を含め、独立した大名として立つつもりかもしれない。こう言う武士はなるべく殺さずに味方に取り込みたい。

「はい、いかが致しましょうか?」

「左京大夫晴政殿に直接説得に向かってもらおう、成功すれば左京大夫殿の名声も上がるし、戦わずして播磨・備前全域を支配下に入れる事が出来る。何より忠勇の武士を無傷で配下に加える事が出来るのが、1番種子島家の為に成る」

「承りました、それでは今まで着々と行ってきた、上月赤松家の家臣に対する調略はどういたしましょうか?」

「続けてくれ、上月赤松家に最後まで忠誠を尽すのが誰かも知りたいし、早々に寝返る者も確認しておきたい」

「はい、それで大内家との国境をどうするかでございますが」

「上月赤松家を種子島家で取り込み、播磨と備前は我が支配領域とする。政元殿は尼子家の撤退に乗じ、浦上政宗の旧領も併合して大勢力を築いている。せっかく手に入れた備前領を大内家に渡しては、政元殿の能力と実績を踏みにじることにもなる」

「分かりました、では上月赤松家の家臣、特に浦上政宗の家臣だった者を中心に切り崩しを致しましょう」

まあこうは言ったものの、俺自身もいつもの通り威圧行為は続ける。特に尼子・浦上・上月赤松と寝返りを続けた備前の国衆は、少し脅せば降伏臣従するだろう。

先ずは備前の国衆・地侍を脅かして上月赤松家から離脱させ、直接種子島家に取り込むようにしよう。上月赤松家を先に降伏させてしまうと、上月家の領地を備前全域と西播磨五郡の評価をしなければならなくなる。

だが備前衆を全員種子島家の家臣に組み入れた後なら、上月赤松家の評価を低くしてから家臣に組み込むことが出来る。それでも本当の実力があるのなら、先に家臣となった者たちを押し退けて立身する事も可能だろう。





結局のところ備前衆は直ぐに降伏臣従を誓い、養嗣子も城を含む半知召し上げにも素直に応じた。天災に左右される事無く、決まった扶持が支給される安心感が広まっていた事もあるし、種子島家が降伏臣従した国衆地侍にとって仕えやすいと言う評判も立っているようだ。

彼らだって裏切りを繰り返したい訳ではない、1つの決断が自分1人だけではなく、家族・一族郎党や領民の命までかかっているのだ。血脈を絶えないように、家名を残すように、武名を轟かせるように、先祖伝来の領地を護る為に、苦渋の決断を繰り返してきたのだ。

もう2度と彼らに苦渋の決断をさせないようにするには、種子島家が不利な状態に追い込まれないようにしなければならない。家臣領民は不安になるような状況に追い込まれることなどあってはならないのだ!

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