魔法武士・種子島時堯

克全

第225話裏技

俺の心配は杞憂(きゆう)に終わり、大内義隆と大内晴持はあっさりと亀童丸の一条摂関家猶子を受け入れた。だが亀童丸を京に上らせて、一条房通卿に会わす事には頑強に反対した。まあ当然と言えば当然で、幼い子供だけを俺が完全支配している京に上らせると言う事は、俺に人質を差し出したと全国の諸大名や国衆に思われてしまうかもしれないのだ。

なによりも大内家の家臣と言う立場は取っているが、いつ裏切って尼子に味方するか分からない国衆や地侍に、俺に頭を下げたと思われるのは致命傷になる可能性があるのだ。

そこで京に上らすのは早々に諦めて、一条房通卿の代理として猶子の儀式を行う人間を護衛の将兵と共に送り込むことにした。そして護衛兵は、亀童丸付きの近習として大内の領内に残すことを考えた。

何故なら大内晴持の護衛として先に送り込んだ将兵1000は、当然大内晴持を護るために出雲の従軍している。もし大内家の跡目を狙う大宮伊治が、大内晴持より先に亀童丸を殺そうとしたら、今の兵力配置では不安なのだ。

いや大宮伊治だけが容疑者ではない、追い詰められた尼子が大内家の内紛を狙って亀童丸を暗殺しようとするかもしれない。なにより密偵たちが集めてきた状況証拠からは、毛利元就が大内家を混乱させようと画策しているとしか思えない。

安芸の国衆地侍を誘導して、尼子と大内の間を味方したり裏切らせたりして、どちらの家にも重い戦費が圧し掛かる割に、決定的な決着がつかないようにしている。しかもその間に毛利家の領地を増やし、毛利家内の反元就派や自主独立を目指している井上家を粛清していた。

1番大切な事は、それぞれの陣営が協力しての大内晴持と亀童丸の暗殺を計画実行させないことだ。1番切り崩しやすいのは公家の大宮伊治で、孫を大内家の当主につけて、外祖父として権力を振るうのは不可能だと理解させればいい。

手っ取り早く大宮伊治が大内氏館の近くに構えた屋敷を徹底的に破壊してやった!

その上で呆然自失になっている大宮伊治に対して、娘のおさいの方が懐妊した子は不義の子の疑いがあり、一条摂関家・九条摂関家・鷹司摂関家が連合して徹底的な調査を行うと言う、最後通牒に等しい手紙を渡した。

もちろん三家当主の署名捺印がされている正式な文書であり、大宮伊治にとっては公家としての死刑宣告にも等しいものだった。

だが1つだけ逃げ道も用意されており、産まれてくる子供が男子の場合、僧籍に入れる事で調査結果は公表しないと言う1文が書かれていた。同時に3家当主から、孫とおさいの方を僧籍に入れるのなら、大夫史に任じた上に俺から毎月銭が支給されると言う内容だった。

はてさて大宮伊治はどう決断するのだろう?

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