魔法武士・種子島時堯

克全

第222話護衛

結果だけ言えば、俺の提案を大内義隆も大内晴持も受け入れてくれたのだが、京の公家衆の総意を言われたら拒むことなど出来なかったのだろう。さすがに俺自身が晴持殿の護衛をすると言った事に驚いていたが、こちらとしてもいろいろ事情があるのだから仕方がない。

問題は土佐一条家からの護衛兵の派遣なのだが、3歳から大内家に養嗣子入りしているから、土佐一条家の家臣には縁が少々薄いのだ。もちろん主家の直系でもあり大内家の次期当主なのだから、将来の栄達も見込んで働くだろうが、それでは安心して任すことが出来ない。そもそも土佐一条家は戦国大名では無く公家大名なのだ、家臣に江戸時代のような忠誠心などないのだ。

だが一条摂関家としては、有力な戦力を持つ分家として土佐一条家と大内家を失いたくないのだ。俺と言うか、九条摂関家と鷹司摂関家に武力で対抗するためには、両家の間は友好であってくれなければならなのだ。

晴持殿が暗殺されて、義隆殿の実子が後継者になることは悪夢だろう!

そこで自分で信頼できる武士を確保しようとしたのだが、俺に圧迫されている畿内で有能な武士など残っておらず、俺の家臣になるか三好長慶が撤退した阿波に渡って虎視眈々と復仇の機会をうかがっている。

そこで一条左大臣閣下は公家らしく搦め手から攻めることにしたようで、事もあろうに俺に大内晴持を護衛する有能な武士の紹介を依頼してきた。流石強かな公家と言うべきだろう、将来のライバルに家臣の紹介を依頼するなど、目先のプライドを重視する者には出来ない事だ。

まあ俺もこの機会を逃す気などないから、戦争孤児から育て上げ、有力家臣の養子として体裁を整えた軍学校出身の幹部候補生を送り込むことにした。彼らに裏切られるようでは、俺には人望も能力もないと言う事だが、まず裏切ら得る事などないだろう。

一条摂関家や土佐一条家の扶持で彼らを養えるのなら言う事はない、それに大内家で活躍して新地を給付されてくれるなら大内家内での発言力も高まるし、戦争をする事無く中国地方を傘下に収めることも出来るかもしれない。

問題は俺が京と大宰府での政務で晴持殿の側を離れる時だ、この時に大内家の家臣団や大内家を割ろうとする敵が、晴持殿を暗殺すべく動くことなのだ。

特に毛利元就と大宮伊治の動きが疑わしい!

大宮伊治は小槻氏宗家の地位と左大史上首の官職を壬生于恒と争い、細川高国に近かったこともあり俺には近づかなかった。もっとも壬生于恒が九条禅定太閤殿下・鷹司准三宮殿下・鷹司関白殿下とうまくやって勢力争いに勝ったと言う話なのだが、そのために大宮伊治は娘を大内義隆の側室にして巻き返しを図ったと言う事だ。

経済的な援助を引き出すだけなら俺も九条禅定太閤殿下・鷹司准三宮殿下・鷹司関白殿下も口出しなどしないのだが、晴持殿を暗殺の疑いが出てはそうも言ってられない。選抜した幹部候補生と共に1000の将兵を送り込むことになった。

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