魔法武士・種子島時堯

克全

第218話九条家と鷹司家の野望と俺の本音

「権大納言殿、この度の働き真に見事でおじゃった」

「いえいえ禅定太閤殿下、御上と朝廷のために当たり前の事をさせていただいただけでございます」

「いやいや、その当たり前のことをしてくれる武家がいなくなった昨今、権大納言殿がしてくれた事は朝廷にとってとても有り難い事なのだ」

「准三宮殿下にまでこれほどお褒め頂けると、私も家臣どもも誇りに思えます」

「いやはや謙遜も大概になされよ、家臣など京で訓練していただけで、実際に丹波で暴れ回ったのは権大納言殿だけではないか」

「そう言って頂くと赤面いたします、若さゆえの猪突をお笑いください、関白殿下」

今日も今日とて、九条禅定太閤殿下・准三宮・鷹司兼輔殿下・鷹司関白殿下が種子島屋敷に襲撃してきた。部屋に案内する前に、玄関で飲み食いしたい物を我が家臣に命ずるのはいつもの事で、勝手知ったる我が屋敷にずけずけと入って来る。

まあなんだ、3人とも公家として五摂家としてやるべき事をやっているだけなのだろう。圧倒的な武力と鬼神に匹敵する法力を使う俺に対して、血縁を繋ぎ御上と朝廷を護るために必死なのだろう。他の公家や五摂家の人間では、俺の懐まで入り込んで本心を探ることなど無理な話だ。

特に禅定太閤殿下は、俺がまだ九州で戦うだけで種子島家自体も京ではそれほど名が広まっていなかった頃からの付き合いだ。万が一にも俺が御上や朝廷に牙をむかないように、何を与えれば俺が満足するか常に探っているのだろう。

確かに九条家と鷹司家自体を、五摂家の中でも頭1つ抜けた存在にしたいと言う野望もあるのだろう。近衛家にしても足利将軍家と幾代も血縁を結び、困窮著しい公家の中では比較的安定した生活を維持していた。

二条家も一時足利将軍家に接近していたが、九条尚経の長女・経子様が二条尹房太閤殿下の正室になられている。その縁もあって、俺と接近して二条家の生末を安定させようと計っておられる。二条家も殆どの荘園を横領されていたので、俺の家臣を代官にする事を条件に荘園を取り返し、毎年決まった年貢を送る事で安心されているのだろう。

まあなんだ、三期作が可能で味も収穫高も飛び抜けて向上するように遺伝子改良した、新種の稲を植えているので、過去の収穫量に合わせて算定した年貢量は鼻糞みたいな量だ。正確に計算して納めるはずの年貢量から言えば、1/9しか納めていない計算になる。

もちろん一条家とは同盟関係だから、俺を警戒し眼の敵にしているのは近衛家だけと言う事になる。近衛家を松殿家の様に消滅させようと思っている訳ではない。だが、余りに酷い謀略を仕掛けて来るようなら、容赦せず滅ぼしてしまう覚悟は出来ている。

俺からすれば、皇室さえ男系男子を継承し、非常時に国民を纏める象徴として存在して下されば、他の公家など死に絶え滅び去っても構わないと言うのが本音だ。

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