魔法武士・種子島時堯

克全

第209話籾井教業・宇津頼重

丹波の赤鬼と言われることになる赤井直正を直臣に加える事ができた、そうなると青鬼と呼ばれた籾井教業も配下に加えたいのが人情と言うものだ、だが調べてみたら籾井教業と言う人はいなかった。歴史的に伝わってる名前と、実際にその時代で使われていた名前が違う事はよくある。だから再度詳しく調べさせたのだが、結論として籾井教業は創作された人物であって、本当は実在しなかったようだ。このパターンも結構あるし、実在しているものの、山盛り美化された普通の人物のことも多い。

しかしせっかく時間を掛けて調べ、朝廷を使い圧力をかけ、俺自身も武力威圧を繰り返してきたのだ、何もせず放置するのは対外的にも問題になる。それになにより籾井家は、京から丹波を経て山陰地方に向かう山陰道が篠山盆地に差し掛かる箇所にあたる要衝・籾井城を中心に福住十五村を支配しているから、味方に取り込むか滅ぼすかしないといけない。

籾井綱重ー籾井綱利
-籾井正綱

「全ての条件を受け入れさせて頂きます」

「うむ、子弟が京に来る日を愉しみにしておる」

俺自身が破壊した大手門から堂々と入城したのだが、毎日防御施設を繰り返し破壊し威圧した効果があり、あっさりと全面降伏してくれた。





次に早急に片付けなければならない国衆は宇津頼重だ!

宇津頼重は事もあろうに小野庄と山国庄の禁裏御料所を横領しており、朝廷はもちろん御上自身が立腹されている。宇津家は宇津城を中心に、天文年間(1532~1554)から山国御領所の貢租を妨害し、北は弓削から南は細川・葛野郡小野にわたる地域において略奪を繰り返し、広大な土地を押領してしまったのだ。そのころから歴代の実力者である足利将軍家・細川管領家・三好家などが、朝廷からの願いを聞いて繰り返し返還を命ずるも聞かなかった。その為に皇室の経済が極度に悪化し、御殿は言うに及ばず塀すら修築する事が出来なくなっていた。

「死ね化け物!」

「愚か者が!」

宇津頼重の命令に従い、控えの間にいた29人の鎧に身を包んだ武将が俺に襲い掛かって来た。もちろん最初から伏兵がいる事には気付いていたし、返還命令に従わないことも想像していた。

いつも通りの手順で防御施設を破壊しているから、禁裏御料所の横領を続けるには俺を殺すしかない。熊野の誓紙を交わした後で、毒を仕込んだ酒を飲ませて殺すつもりだったのだろうが、生憎体内なら魔法を発動することができるのだ。どれほどの劇薬であろうとも、俺を毒殺することは出来ない。

しかし宇津頼重も毒が効かない場合も想定していたのだろう、控えの間に伏兵を潜ませていたが、今は俺に叩きのめされ半死半生で転がっている。

「長年に渡り禁裏御料所を横領したこと、また熊野の誓紙を交わしたのにもかかわらず毒殺しようとしたこと、それが叶わず伏兵に襲わせた事、全て武士にあるまじき恥ずべき行いである!」

「黙れ化け物! 人ならざる者との約束など守る必要などない!」

「貴様が約束を破り続けた御上や朝廷も人ならざると申すか! もはや許し難し、厳しく詮議した上でさらし首にしてくれる!」

宇津頼高ー宇津頼重ー宇津頼章

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