魔法武士・種子島時堯

克全

第188話堺

1543年7月5日『摂津国と和泉国に跨る堺の街』種子島権大納言時堯・15歳

三好長慶が土佐一条家に備える為に阿波に戻り、俺が細川晴元を処刑した後の摂津国は群雄割拠の状態だった。だが堺だけは財力と傭兵団の力で安全を確保し繁栄していたのだが、俺に荷止めをされた上に、俺に配慮して各地の商人が取引を止めた事で経済力に陰りが見えていた。今では俺と敵対している者としか商売が出来ない為、阿波三好家を中心に反種子島家と商売するしかなかった。

この状態で三宅城へ大岩を叩き落としたデモンストレーションは衝撃的だったようで、堺の傭兵たちを調略すると、いとも簡単に全員種子島家に寝返った。俺が悪党ならば、寝返った傭兵を使って堺商人を皆殺しにし、堺にある全ての財産を奪ってしまうのだろう。だがそのような事をすれば御上の信頼を失うし、今後王道を歩むのに支障が出てしまう。

「さて会合衆よ、堺を開け渡す準備は出来たかな?」

「御待ち下さいませ権大納言さま、奴隷を南蛮人に売り渡したのは我々ではございません。それは南蛮人が我々に罪を着せようとして嘘をついたのでございます」

会合衆を代表して今井宗慶が白々しい事を言うので、俺の我慢が限界に達してしまった。

「その白々しい嘘は我慢ならん! 死にたい者以外は街をでよ!」

俺の激怒に会合衆は言葉を失っていたようだが、慌てて俺に更なる言い訳をしようとしていたようだが、そんな話を聞いてやるほど俺は暇でもお人好しでもない。素早く空を翔けて三宅城を潰した時に使った大岩を取りに行った。


一瞬で三宅城まで翔けたことで、低空飛行でマッハを超えてしまいソニックブームと言う大音響と衝撃を引き起こした。いやそうなる事を計算して低空でマッハを超えて三宅城まで翔けたのだ。そして今度は恐怖を育てるように大岩を低空でゆっくり堺まで運んできた。

戻って来た俺が見たのは恐怖で堺を逃げ出す人々の姿だった。

情報が命の堺商人は、当然三宅城の一件を調べ尽している。そして俺が普段は激怒した姿は見せたことが無く、朝廷でも御救い小屋でも優しくて低姿勢な事、俺が人前で激怒したのは細川晴元が御所を襲撃した時だけだと調べ尽している。その彼らの前で俺はわざと激怒して見せたのだから、堺が問答無用で潰されると判断したのは当然だろう。

そんな中でも財産に目が眩んで堺に残ろうとしている者、用心棒や使用人に家財を運ばそうとする者もいた。だが用心棒の牢人たちは俺に臣従する事が決まっているし、多くの使用人も種子島家で雇う事で話がついていた。

「最後の最後で素直に謝れば、財産だけは持ちだすことを許す心算であったが、権大納言の俺に嘘偽りを申すなど朝廷を、いや御上を愚弄したと同じじゃ! 命だけは助けてやるから、とっとと何所へでも逃げていくがよい、者ども追い立てよ!」

俺の指示を受けた元使用人・元用心棒が、前主人とその家族を刀や抜いて脅したり棒を持って殴りつけて追いだしている。

「持ち船や蔵を確保せよ! 銭一枚でも盗んだ者は、どこに逃げようとも地獄の果てまで追いかける、決して盗みや乱暴狼藉をするでない! その代わりこれからいくらでも功名も財も手に入れる事の出来る機会をやる」

「「「「「おう~」」」」」

俺は空中で支えていた大岩を人の居ない所に投げ落とし、その衝撃と轟音を止めの脅しにして、堺に住むすべての商人を追放し街を手に入れた。

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