魔法武士・種子島時堯

克全

第185話能勢郡

1543年7月2日『摂津国・能勢郡』種子島権大納言時堯・15歳

昨日はピクニック気分の公家衆を無事に三宅城を往復させ、アゴ・アシ・御土産付きで歓待した。牛車や馬車を道普請完成前から準備していてよかったと、つくづく思った昨日だった。だが公家の時間は終わった!

今日からは武家の時間だ!

「頼幸殿、どうするのだ?」

「どうあっても、このまま所領を持ち続けることをお許し願えないのですね?」

「我が家臣を養嗣子として迎える家は認めよう、だが嫡男に継がして所領も認めろと言うのは無理だ」

「・・・・敵わぬまでも戦って意地を示し名誉を保つことは出来ます」

「だがそうなると能勢家も他の家も、家名も血脈も途絶える事になるが、頼幸殿の代でそうなってご先祖様に申し訳が立つのか?」

「それは・・・・・」

「武器を捨て百姓として生きるのなら土地を離れる必要は無い、能勢を離れる事を覚悟すれば武士として生きることが出来る。どちらを選んでも家名を残し血脈をつたえる事が出来る」

「権大納言さま、我が井内家のような地侍でも婿を迎えることが出来るのですか?」

「大丈夫だ、だが所領に合わせた能力の家臣になるぞ?」

「どういう意味でございますか?」

「万余の兵を指揮するような家臣を所領100石の養嗣子にするわけにはいかん。精々100や200の兵を指揮する家臣になるがそれでもいいか?」

「百の兵を率いる婿殿ですか!?」

「まあ養嗣子に送るのだから、当然若武者だから後には千余の兵を指揮するかもしれんが、今は100石の領主家なら百余だな」

「権大納言さま、我が森本家が養嗣子を迎えるのならどうでございましょうか?」

「配下の一族一門家臣一同の検地をしてからでないと何とも言えんが、さっきも言ったように千石程度の領主なら千余指揮の若手家臣になる、能勢郡全体で1万余石であったな?」

「はい、左様でございます」

「能勢三惣領家なら一家3000余石だから、二千余の部下を率いる若手独身家臣となると数が限られるな。早い者勝ちになるが、将来有望な家臣を養嗣子に送る事になるな」

「あの、権大納言さま、我ら西郷衆の盟主・能勢頼幸さまが養嗣子を迎えた下さった場合は、西郷衆の家はどう言う扱いになるのでございましょうか?」

「陪臣でいいのか? 種子島家の直臣でなくてもいいのか?」

「陪臣ならば所領に残ることをお許し願えるのでございましょうか?」

「許すがそれでいいのか? 武士を続けたい者が扶持武士として種子島家に仕え、戦う事が苦手な者が百姓として能勢に残った方が、少しでも家名と血脈を残せる可能性が高くなるのではないか?」

能勢衆は俺の提案を真剣に考え込んだ!

まあこれで少なくとも意地と名誉の為に、城を枕に討ち死にを選ぶ事だけはないだろう。妥当な線は一族を扶持武士と百姓に分ける事だが、中には養嗣子を迎える事を選ぶ家もあるかもしれない。特に三惣領家は一族一門家臣一同の事も考えなければいけないから、とても辛い所だろうな。

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