魔法武士・種子島時堯

克全

第166話次男誕生

1542年12月6日『筑前・大宰府』種子島権中納言時堯・14歳

「おんぎゃ~、おんぎゃ~、おんぎゃ~」

「姫様、今度も本当に男の子でございます!」

「よくやった、兼子」

「はい、権中納言さま」

「産婆よ、産湯を使い早く初乳を飲ませてやってくれ」

「はい、権中納言さまの御召しのままに」

「しかし権中納言さまのお言葉通り今度も男の子でございました、天から授かったお力は素晴らしいものでございますね」

俺が毎日キスして治癒魔法の力を少しずつ流し込んだから、妊娠中毒などの症状もなく兼子は元気だし、産まれた次男も五体満足で元気な産声をあげてくれている。

「とは言っても他人の子までは分からんからな」

「いえいえ、それでもさすがは神の申し子権中納言さまでございます!」

「さあ、まずはこれを飲みなさい」

今回は季節に収穫して準備しておいたローズヒップティーに蜂蜜を入れた物を渡した。タンポポ茶・タンポポコーヒー・麦茶も準備してあるが、兼子はローズヒップティーが1番好きなようだ。

長男・太郎稙時が産まれた時には、人体実験のような魔法干渉をする気はなかったのだが、次男妊娠時に兼子が急性腎炎を発症してしまったのだ。子供を諦め流産させる事で兼子を助ける事は出来るのだが、毎日キスして魔法の効果を兼子に流し込めば、効果が限られる方法ではあるが母子ともに助ける事が出来る。

事ここに至っては、魔法の副作用を恐れて次男を見殺しにする事など出来はしない。未来のことはその時に全力を尽くせばいいことであり、今この時は次男と兼子の為に全力を尽すべきだと決意して魔法を使い続けた。

今はまだ兼子にも次男にも魔法による影響は見られない。だがここで考えなければいけないのは、長男が魔法を使えず、次男が魔法を使えるようになった場合の種子島家の家督継承問題だ!

魔法が使えない稙時が、次男に嫉妬して殺そうとするなどと言う将来は絶対嫌だし、魔法を使える次男が魔法を使えない稙時を侮って家督を狙って内紛を起こすような将来も嫌だ。だから仕方なく毎日毎晩稙時にキスして、無属性の魔力を経絡経穴に流すようにした。

俺が自分の子供の身体中にキスしている姿など、誰にも見せられるものではないが、口の中で魔法を発動させてキスした瞬間だけ、魔法が消失するまでの僅かな時間だけ、魔法の効果を稙時に及ぼせるのだから仕方がないのだ。

兼子の腎臓病は完治したが、3人目の子供を妊娠することを考えれば、毎日毎晩兼子にキスして予防治療をしなければいけない。稙時・次男を魔法使いに出来るか確認するためにも、身体中にキスしなければならない、だがその所為で俺は変態的な性愛の持ち主に思われてしまう。

そうそう、次男は鷹司家の家督を継ぐ事が内定しているので、名前は鷹司次郎冬時と名付けた。

九条太郎稙時(1541年3月15日)1歳
鷹司次郎冬時(1542年12月6日)0歳

九条兼子(17)・正妻
一条於富(15)・正妻
九条初子(10)・義理の姪

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