魔法武士・種子島時堯

克全

第165話福祉政策

1542年12月5日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・14歳

「中納言殿、当道座の事を御上の勅命としたこと、御上も心から喜んでおじゃれたな」

「御上のお役に立てたのでしたらよかったです」

「御上も常々弱き者を護りたいと仰られておじゃれた、権中納言殿が創り出したとういう手話と言うものにも、聾唖の者たちの助けになる事しきりに感心なされておじゃれたな」

「私は提案させていただいただけでございます、朝廷で取り上げて下さったのは御上でございます」

「そうではおじゃるが、障害のある者を朝廷の雅楽に加えるなど、権中納言殿が提案せねばとても公家衆は納得することなどないでおじゃる。御上がいかに願おうとも、権中納言殿が全ての扶持を負担してくれなければ、やれることでは無いでおじゃるよ」

「御上の願いを叶える為なら安い事でございます」

「まあ実際は、権中納言殿が望む世を創り出す為に御上を利用しているのでおじゃろう?」

「そうではございません、たまたま御上の願いと私の願いが一緒だっただけでございます」

御上と朝廷の許可を取り、当道座の本所を京の種子島屋敷に定めたのだが、早速保護していた身体障害者に検校・別当・勾当・座頭などの役を与えて仕事を始めさせた。今は平曲の平家物語を中心に琵琶をひき生活の糧にしているが、九州で俺が保護育成した障害者は地歌三弦・胡弓楽・箏曲等の演奏・作曲を教え、更に鍼灸・按摩・指圧・マッサージを指導した。

それに加えて算盤(そろばん)を使った経理が出来るようにもしたし、健常者と組んで版画刷りや活版印刷など事務系仕事が出来るようにもした。

この世界この国この時代では、五体満足で戦う事が出来る者は兵士とされる事が多い。勘定と言われている経理や、祐筆言われている秘書官や事務係は、戦う事が不得手な者がやる仕事と思われ、戦方に比べて一段も二段も低く見られている。

もちろん軍師ともなれば別なのだが、それでも家によったら軍師ですら低く扱われる。だが戦場で働いて後天的な障害者となった者は、功労者として評されるべき者であるが、戦場で働けなくなっても主家の為に役立ってもらいたい。それに功労者である彼らが、先天的障害者の部下を指揮していれば、戦方も事務方に無理な要求はし難くなる。

戦傷が原因で隠居した者は、その傷によって多少の恩賞は得ていたが、中には家族に邪険に扱われる場合もある。だが障害を受けてからも事務方として働き続ける事が出来れば、世話役の女を召し抱える事も出来るから、女性の雇用先を増やす事にもなる。

もちろん事務方で働くことも出来ないほどの障害を戦で負った者は、生きている限り合戦傷害扶持を与える仕組みにしてある。先天障害者には仕事を学ぶ機会を与え、更には仕事自体を与えて生きて行けるようにした。後天障害者には名誉と仕事を与え、合戦で傷を負う事を恐れないようにしたのだ。

コメント

コメントを書く

「歴史」の人気作品

書籍化作品