魔法武士・種子島時堯

克全

第146話群行先発部隊

1541年7月1日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・13歳

「各地に派遣した使者の返事は全てそろったのでおじゃるか?」

「はい、さすがに御上かなの勅使に逆らう者はおりませんでした」

「六角も宮を再建するのに多大の出費で大変でおじゃろうな」

「左様でございますね、栗太郡勢多と甲賀垂水に頓宮を造営しなければなりませんから」

「斎宮が襲われる事はないでおじゃろうな?」

「さすがにそのようなことは致しますまい。もしそのような事を致しましたら、朝廷が派遣する討伐軍にたいして、周辺諸国の援軍はもちろんなくなりますし、国衆・地侍も出陣を拒みましょう。まあなにより斎宮には私が同行して、誰であろうとも指1本触れさせはいたしません」

「そうでおじゃるか、それならば大丈夫でおじゃるな。それで今回初めて先発させる群行でおじゃるが、公方と六角への威嚇でおじゃるか?」

「はい、消えて無くなってしまった斎宮寮の再建部隊と言う建前ですが、神三郡の領民や伊勢守護や国衆・紀伊根来寺に負担させる事は可能でございます。ですがそれでは行程の道を整備させる事も、近江国・伊賀国・伊勢国の国衆・地侍を威嚇することも出来なくなります」

「それにしても1万の兵を伊勢に下向させて、御所の守りは大丈夫でおじゃるか?」

「今回下向させる兵たちは、この3カ月でそろえた新兵たちでございます。御所の護りを務める歴戦の六衛府の兵も、洛内を護る京識の兵もむしろ増えておりますから安心されて下さい」

「そうでおじゃるか、それならば大丈夫でおじゃるな」

「今回の先発群行部隊は、近江国・伊賀国・伊勢国に攻め込むときに大砲を移動させるだけの道を創りながら伊勢に向かいます」

「権中納言殿は恐ろしでおじゃるよ」

斎宮が伊勢に下向する時の行列の道中を群行と呼んでいるが、行路は近江国の国府と甲賀と垂水、伊勢国の鈴鹿と壱志に設けられた頓宮で各1泊し、6日目に斎宮へ入る前例であったが、特に垂水頓宮と鈴鹿頓宮の間の鈴鹿峠は厳しい山越えなので、道中最大の難所であった。

伊勢で斎宮が生活される地は、伊勢神宮から約20キロ離れた旧斎宮寮(現在の三重県多気郡明和町)を再造営する予定だった。古の斎宮寮は137ヘクタール余りの広大な敷地に碁盤目状の区画が並ぶ大規模なものだったが、そこには寮頭以下総勢500人あまりの人々が仕えていたそうだ。だが今回は非常時に籠る宮城も内包した、防御力も備えた3万兵が籠城可能な新斎宮寮とする予定だ。

だがまずは京から新斎宮寮に向かう道造りのために、種子島家が新たに召し抱えた流民や購入した奴隷を全て投入した。

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