魔法武士・種子島時堯

克全

第36話上村兵庫允長種再び

1536年3月『大隅・国分清水城』種子島左近衛将監時堯・8歳

「若殿、兵庫允でございます、お呼びでございますか?」

「兵庫允、よく来てくれたな、入ってくれ」

「失礼いたします」

「さっそくだがいよいよ時が満ちた」

「相良家を攻め滅ぼすのでございますか?」

「いや滅ぼさんよ」

「降伏させるのでございますか?」

「いやそれも違う」

「どうなされるのでござますか?」

「兵庫允を相良家の当主にする」

「え?!」

「ただし城地は著しく狭くなる」

「承りました、相良家の名跡と血脈を残す事が出来るのなら望むところでございます」

「総大将は余が直々に務める、副将は玄武と兵庫允に任せるが、兵庫允は名目だけと思ってくれ」

「分かっております、私ごときが種子島家の副将を務められるとは思っていません」

「兵庫允には、いずれ1軍を預ける事が出来るだけの才能があると思っているが、今しばらくは学ぶ事があるとも思っている」

「はい、精進いたしまする」

一旦攻撃を決断すると後は簡単だった。玄武と兵庫允が侵攻する前に、攻める予定の城の上空を飛び廻り城門を打ち壊す。これで全ての国衆が降伏するか城を捨てて逃げる。9割9分は降伏臣従するのだが、中には気骨があり忠誠心の厚い者もいて、そんな漢だけが相良家の居城に向かって落ちて行った。

慌てず騒がず着実に南肥後の城砦を落とし、国衆・地侍を降伏臣従させていった。余り急ぐと躓いたりこけたりして、戦争もしていないのに怪我する家臣もいるのだ。ろくに戦いもしないのに傷病兵が出てしまっては笑い話なので、ゆっくりゆっくり侵攻した。何より大切にしたのは、種子島軍に領民・特に婦女子に乱暴狼藉させない事だ。

そのために売春を仕事にしている陣女郎を事前に集めていた。決して理想の姿ではないが、現実を無視して弱い婦女子を傷つけるなどあってはいけない。独身男子兵が常に溢れている種子島領では、割り切って売春を仕事にしている女性が多くいた。そんな女性を活用しない手はない、自分の理想を追い求めて相良領の女性たちが強姦されたら本末転倒となってしまう!

今回の侵攻は、最終的には相良家だけでは終わらなかった。阿蘇家も名和家も当主争いの内紛が起きており、殆どの家臣や支配下の国衆から見捨てられていたので、俺が侵攻すると草木が風になびくように降伏臣従して来た。

そして止めに種子島家海軍を投入し、沿岸部の城砦と湊・津も降伏臣従させた。同時に陸軍海軍ともに、種子島領に逃げることが出来なかった貧民のための炊き出しを行い、望む者は種子島家の家臣に採用した。

「種子島家南肥後侵攻軍・陸軍」
総大将・種子島左近衛将監時堯
副将・市丸玄武
副将・上村兵庫允長種
鉄砲隊・ 500兵(士筒)
弓隊 ・1000兵
弩隊 ・2000兵
投石隊・1000兵
投槍隊・1000兵
長槍隊・2000兵
徒侍隊・1000兵
工兵隊・1000兵
看護隊・2000兵
輸送隊・2000兵
総兵力・1万3500兵

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