魔法武士・種子島時堯

克全

第5話交易・金銀銅の交換比率・上京

「監物殿、我が海軍衆を宜しく頼みます」

「犬楠丸殿の頼みでは断れませんからな、各地の水軍棟梁に直接紹介いたしましょう」

あれから監物殿とはさらに交渉を重ねて、初期型のマスケット銃10丁と火薬の調合法を教えることで、帰りの航路に種子島海軍の小型ケッチ・小型スクナー・関船・小早船を同航させてもらうことになった。

これは元々の種子島家水軍衆に加えて、新たに航海術を学ぶ領民の習熟航海でもあるが、何より軍資金確保の意味もある。同時に父上様が、足利将軍に鉄砲を献上する上洛の為でもある。俺にとっては有り難くも何もない将軍だが、父上様にとっては大切な存在らしい。まあそれに守護代職と官位官職を頂けたら、島津家や肝付家・禰寝家の種子島侵攻への牽制にはなるだろう。

俺はここで監物殿の力と、朝廷・将軍家への献上品と言う建前を押し立てて大金を輸送することにした。

先ずは後奈良天皇に即位式の費用として5000貫文の銅貨を献上する事にした。同時に将軍家にも軍資金200貫文と初期型火縄銃2丁を献上する事にした。

これには思惑があって、手持ちの銅貨を両替することで暴利を得る心算なのだ。いま日本に流通している銅貨は統一されておらず、永楽通宝・天聖通宝・皇宋通宝・元豊通宝・私鋳銭が混在して流通している。しかも日本各地で価値が違うのだ!

大雑把に分けると明銭・宋銭・唐銭に分けられるのだが、宋銭や唐銭は精銭と呼ばれて西国で好まれ、一方明銭(永楽通宝)は東国で好まれている。細かい交換比率は以下を見て欲しいが。種子島から永楽銭1万枚を持って東国に行って精銭と両替すれば4万枚になる。そして4万枚の精銭を種子島に持ち帰り、永楽銭に両替すれば8万枚になるのだ。

1貫文は銅銭1000枚だから、今回献上する5200貫文は銅貨で520万枚だが、他に100万枚の銅貨を船に積んで運び両替するだけで元が取れる。まあ元を取るだけでは済まさない、献上銭以外に5000貫文を北条家の本拠地・相模の小田原城まで運んでぼろ儲けする心算だ!

これだけの資金力があるのは高価な生産品の御蔭なのだが、まずは鯨から作れるもので説明すると、龍涎香が8倍の金と交換できる。つまり100kgの龍涎香なら800kgの金と交換できると言う事だ。幸運な事に、今まで狩ったマッコウクジラから合計411kgの龍涎香が手に入り、売却した分で829kgの金が手元にある。これは日本の金貨で4万9345枚となり、銅貨なら7401万7857枚となる。

50トン位に成長したマッコウクジラの雄だけを狩っているが、シロナガスクジラ1頭から取れる鯨油の量は1BWU・約120バレル・1万9000リットル程度で、ナガスクジラなら2頭分、ザトウクジラなら2・5頭、イワシクジラなら6頭分となる。

肝心のマッコウクジラ1頭あたりの油は500ガロン・1900リットルだが、特に高価な脳油は4トンも採れる。4トン=4000kg=4000000gから蓬やミカンの皮を加えた薬用石鹸・化粧石鹸4万個が作れる。1個が銅貨100枚(100文)で売れるから、これだけで4000貫文の軍資金になる。

他の部位も薬用肝油・食用肉としても活用しているし、骨は工芸品・パイプ・印鑑の材料、鯨ひげは釣り竿・衣服・傘・扇子の材料などありとあらゆる部分を活用することが出来る。しかも最後の最後は田畑の肥料として活用できた。

100頭以上のマッコウクジラを狩った俺は、この国1番の大富豪となっていた。

永楽通宝は明銭
天聖通宝・皇宋通宝・元豊通宝などは宋銭
開元通宝は唐銭
宋銭や唐銭は精銭と呼ばれて西国で好まれる
一方明銭(永楽通宝)は東国で好まれる
鐚銭は、質の悪い私鋳銭や、長年使われて劣化した銭

東国では、永楽銭(明銭)1枚で精銭4枚・鐚銭8枚から10枚
京では、永楽銭(明銭)1枚で精銭1枚・鐚銭8枚から10枚
九州では、永楽銭(明銭)2枚で精銭1枚・鐚銭8枚から10枚

金1両(約16・8グラム)は銀7・5両(約126グラム)と同価値
金1両は永楽銭1・5貫文と同価値
1両は4・5匁(約16・8グラム)

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