立見家武芸帖

克全

第48話拐かし9

「そうか、分かった、任せておけ」

我は朝早くから、浅吉、熊吉、おいよさんの三人を連れて、田沼家の上屋敷に行って、用人の三浦六左衛門殿に全ての事情を話した。
そうしたら、予想外に御老中の田沼様が直々に話を聞いてくださった。
とても御忙しいのに有難い事だ。
しかも我の願いを聞き届けてくださり、長屋を貸してくださるという。

しかも上屋敷と中屋敷の二ケ所に貸してくださるというのだ。
だが条件は付けられた。
中屋敷に住む世子の大和守様にも、武芸を教えるという条件だった。
別段拒む事でもないので引き受けさせてもらった。

だがこれで、我に自由な日はなくなってしまった。
空いている時間はあるが、田沼家上屋敷、白河松平家上屋敷、古河土井家中屋敷に続いて、田沼家中屋敷にまで四日に一度出稽古に行くことになる。
休みなく武芸の稽古を行う事は、何時もやっていたので苦ではないが、誰かを毎日教えるというのは結構気がつかれるのだ。

御老中は、白河公にも土井家の江戸家老にも手紙を書いてくださり、我のために各屋敷に長屋を与えられるようにしてくださった。
恐れ多い事ではあるが、御陰様でどの屋敷でも急ぎ長屋を用意してもらえた。
田沼家中屋敷では、上屋敷ほどではないが結構な長屋を用意してもらえた。
白河松平家上屋敷と古河土井家中屋敷では、田沼家ほどではないが、江戸詰めの下級藩士に比べれば十分な長屋を急遽用意してくださった。
有難い事である。

一番気心が知れていて、長屋も広い田沼家上屋敷には、浅吉とおいよさん家族に入ってもらい、留守を預かってもらった。
白河松平家上屋敷には、一番度胸のある伊之助に入ってもらう事にした。
御老中の六男美濃守様が屋敷を預かる古河土井家中屋敷は、熊吉に預かってもらったが、熊吉には少々考えるところがある。
剛力の熊吉には金砕棒を与え、鬼に金棒状態にしてみたいのだ。
問題は田沼家中屋敷で貸していただく御長屋をどうするかだ。

『立見藤七郎が貸し与えられた長屋』
「田沼家上屋敷で貸与された表長屋」
間口と奥行が三間で九坪、半坪の入口土間から入ると炉付の二坪半の板の間があり、畳敷きの六畳二間が一階である。
天井は低いが、階段箪笥を使って登る板の間の九坪屋根裏部屋がついている。
更に裏には二坪の炊事場と一坪の土間が、下屋造りでついていた。

「田沼家中屋敷で貸与された表長屋」
間口と奥行が三間で九坪、半坪の入口土間から入ると炉付の二坪半の板の間があり、畳敷きの六畳一間と半坪の勝手口土間と二坪半の台所が一階である。
天井は低いが、階段箪笥を使って登る板の間の九坪屋根裏部屋がついている。

「白河松平家上屋敷に貸与された長屋」
間口と二間で奥行四間半で九坪、半坪の入口土間から入ると炉付の二坪半の板の間があり、畳敷きの六畳一間と半坪の勝手口土間と一坪半の台所が一階である。
天井は低いが、階段箪笥を使って登る板の間の九坪屋根裏部屋がついている。

「古河土井家中屋敷に貸与された長屋」
間口と二間で奥行四間半で九坪、半坪の入口土間から入ると炉付の二坪半の板の間があり、畳敷きの六畳一間と半坪の勝手口土間と一坪半の台所が一階である。
天井は低いが、階段箪笥を使って登る板の間の九坪屋根裏部屋がついている。

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