聖賢者は悪女に誑かされた婚約者の王太子に婚約を破棄され追放されました。

克全

第7話:復讐2

俺が皇国からアルフレオ王国に戻るのは簡単だった。
皇国は皇帝と最高権力者が同時に死んだので、喪に服して闘技場が休みだ。
剣闘士の俺が他に稼ぐ場所を求めて移動するのは当然の話だ。
姿形がアルフレオ王国にいた頃と全く違っているので、お尋ね者にされていても、全く疑われる事はなかった。

「お初にお目にかかります、カリフト皇国闘技場で戦っていた、アレクサンドロスと申します、以後お見知りおき願います」

王太子のフレディと、王太子妃となったマリアンに会うのは簡単だった。
聖賢者だったころの俺を殺し損ねた二人は、屈強な護衛を必要としていた。
カリフト皇国闘技場で無敗を誇った俺は、格好の候補者だったのだ。
二人は聖賢者である俺の魔術を心底恐れていた。
だからこそ俺との謁見場には、魔力無効の魔道具が、これでもかというほど設置されているのだ。

「おお、そなたが有名なアレクサンドロスか。
そなたの無敵ぶりを噂に聞いて、ぜひ一度会いたいと思っていたのだ」

愚かな奴だ、全く俺の事に気がついていない。

「本当ですわ、私も会いたいと思っていたのです」

マリアンが醜い顔で笑顔を作ろうとしているが、女の顔はどんな表情をしても美しくなることはないので、無駄な努力だ。
それに、淫売に褒められても気持ちが悪くなるだけだ。
俺に背後から責められたシシン侯爵が全てを白状した。
フレディを籠絡するために、皇都で有名だった売春婦を買い取り、形だけ養女にしてアルフレオ王国に送り込んだとな。

「どうであろう、アレクサンドロス、私の家臣になる気はないか?
もしその気があるのなら、私専属の近衛騎士隊長にしてやろう」

売春婦に籠絡されるほど愚かな奴だから、人間の心を地位や金で買えると思っているようだ、こんな男を一時とは言え恋人にしていた自分が恥ずかしい。

「殿下が手ずから剣を下賜してくださるのなら、考えなくもありません」

「おお、そうか、そうか、アレクサンドロスの武勇を考えれば、それくらいの事は当然の事だ。
今身に帯びている王家の宝剣を下賜しようではないか、どうだ」

「本当に下賜していただけるのなら、終生、忠義を尽くさせていただきましょう」

愚かなフレディは、俺の側近くまで玉座から降りてきて、剣を与えようとした。
俺は最初顔を伏せていたが、剣を肩に押し当てられ、御礼を言上する時に上を向き、昔の声で囁いてやった。

「復讐に戻ってきましたよ、フレディ」

驚愕の表情を浮かべるフレディを、奪った宝剣で頭から尻にかけて真っ二つにしてやって、返す刀を平にしてマリアンの顔を叩き、粉砕されたスイカのようにしてやったが、後は王宮の大掃除だ!

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