幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全

第16話:告白・カチュア視点

私が哀しそうにしているから、慰めようとしてくれたのでしょう。
金猫ちゃんがペロペロと私を舐めてくれました。
とても柔らかくて好い香りがします。
舐められていると気持ちよくてうっとりとしてしまいます。
いつまでもこうしていてもらいたい気持ちになったのですが、フェアリーが焼きもちを焼いてしまうのです。

「おい、こら、やめろ、金猫、カチュアが穢れるだろう」

フェアリーが珍しく本気で怒っているようです。
何を怒る事があるのでしょうか、とても不思議です。
私は気持ちがいいからずっとして欲しいのに。

「うみゃああああああ!」

金猫ちゃんがフェアリーに何か真剣に話しかけています。

「え、なに、それ、本気、本気なんだね、だったら仕方ないわね。
カチュア、金猫が今から話しかけるか、驚かないでって言ってるわよ」

「え、どういう事、金猫ちゃんは私と話せるの?
だったら今までどうして黙っていたの?」

私はフェアリーのいう事が信じられませんでした。
いえ、信じたくありませんでした。
金猫ちゃんが私に話せるのに話しをしてくれていなかった、こんな哀しい事はありません。
信じたくないという気持ちも分かってもらえると思うのです。

(ごめんよ、カチュア、でも、それにはちゃんとした理由があるんだよ。
怒らずに聞いてくれるかい、カチュア)

最初は凄くビックリしましたが、それも当然だと思うのです。
今まで経験した事のない、心に金猫ちゃんの考えが伝わってくるという、驚くべきことが起きたのですから。
でも、その驚きは一瞬でしかありません。
伝わってくる想いに、間違えようのない金猫ちゃんの気配と優しさがあります。
先程まで私を包んでくれていた、思い遣りの心です。

(はい、聞かせてもらいます、でも、全部ですよ、もう隠し事はなしですよ)

私は本気で言いました。
だって、これ以上隠し事をされてしまったら、悲しくて哀しくて、心が壊れてしまうかもしれませんから。
そんなことになったら、金猫ちゃんがとても後悔すると思うのです。
金猫ちゃんを哀しませたくはありませんから。

(分かったよ、全部話すよ。
本当は、カチュアを驚かせるような事は、もう少し隠しておくつもりだったんだ。
あと二、三年して、カチュアが人間の世界に戻って、人間の世界の常識を覚えて、友達も家族もできた頃なら、話していいと思っていたんだ。
だけど、カチュアをこれ以上哀しませるわけにはいかないし、カチュアが本気で我の事を心配してくれているから、思い切って話させてもらうよ。
嘘偽りのない本当の事だから、信じて欲しい)



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