引きこもり吸血姫に一目惚れ

克全

第17話:あれから2年

俺は情けなくて哀しくて涙が流れそうだった。
だが、泣いてばかりではいられない、これからの事を考えなければいけない。
俺がカーミラにとってヒュウガよりも価値が低い事など、最初から分かっていた。
ヒュウガが十五歳になって急激に弱り、死を迎えそうになった時、カーミラは何の躊躇いもなくヒュウガを助けた。
俺ほど嫌がっていた吸血と眷族に加える事を、あっさりとやった。

俺の思惑通りではあるが、暗澹たる気持ちだ。
もし俺が死にかけたとしたら、カーミラはヒュウガ同様に俺の血を吸って眷族に加えてくれるだろうか、その自信が全くない事が俺の心を激しく動揺させる。
カーミラは本来とても優しい心をもった女性だ。
その優しさがカーミラを追い込んでしまっていると思う。
ヒュウガがカーミラの追い込まれた心を解きほぐしてくれるのなら、今回の件はどれほど苦しい現実だったとしても、飲み込むしかない。

「カーミラ、他にも引き取り手のない老犬がいるんだ。
一頭でも二頭でも引き取ってあげるわけにはいかないだろうか。
施設にいる時にはヒュウガと仲がよかった友達だと思う、どうだろうか」

俺の提案にカーミラがわずかに逡巡したように見える。
今までより少し優しさが表に出るようになっている。
これがヒュウガのお陰なら感謝しなければいけないのだが、嫉妬を感じてしまう。

「ワン」

ヒュウガが助けてやってくれというように一声泣いた。
俺の思い込みでないのは、カーミラの表情から明らかだ。


「しかたない、許して使わす、引き取れるだけの犬の譲渡を受けてよい」

俺はカーミラの許可を受けて老犬を引き取ることにした。
前回譲渡を受けたヒュウガを保健所に連れて行き、ちゃんとお世話をして元気であることを証明する事で、今度は二頭同時に譲渡を受けることができた。

俺が選んだ子の一頭は、推定年齢十四歳のおじいちゃん犬だった。
去勢の済んでいるコーギーで、体重は十二キロだった。
二年前にも見た子で、高齢のために引き取り手がなかったのだろう。
二年前は人慣れ犬慣れの練習中だったと記憶しているが、今ではよく慣れている。
保健所からの引き取りになるので医療措置は十分されていた。
マイクロチップは挿入済で糞便検査にも異常はなかった。
ノミダニ駆除も狂犬病予防接種も6種混合ワクチン接種も終わっていた。

俺が選んだもう一頭は推定年齢十三歳のおばあちゃん犬だった。
避妊の済んでいる柴ミックスで体重は八・五キロだった。
この子も二年前にも見た子で、高齢のために引き取り手がなかったのだろう。
いや、俺の記憶が確かなら二年前から緑内障でほとんど目が見えなくなっていた。
だから優先的に引き取ってあげた。
保健所からの引き取りになるので、医療措置は十分されていた。
マイクロチップは挿入済で糞便検査にも異常はなかった。
ノミダニ駆除も狂犬病予防接種も6種混合ワクチン接種も終わっていた。

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く