第236話：一八四七年、イギリス本土上陸戦３

　イギリス本土をできるだけ少ない損害で占領するために時間をかけていたが、いよいよその時がやってきた。

　ポーツマスに残存していたイギリス海軍艦艇は、徳川海軍地中海艦隊に海上封鎖され、港から出れなくなっていた。
　サウスエンドに残存していたイギリス海軍艦艇も、徳川海軍北アメリカ艦隊に海上封鎖され、港から出れなくなっていた。
　もしかしたら出撃して一発逆転を狙うかと思ったのだが、イギリス首脳部は弱気になっていたのだろう、艦隊保全を優先した。

　イギリス海軍艦艇の妨害が全くなくなった状態で、フランスに集結していた非アングロサクソンや欧州貧民で編制したイギリス本土上陸軍を使った。
　一番簡単なのは対岸に強制上陸する事だ。
　だがそれではスコットランド方面とコーンウォール半島方面にイギリス軍を陽動させているとはいえ、それなりの損害を受けてしまう。

　イギリス本土はできるだけ破壊して荒廃させる予定だが、非アングロサクソンに悪感情を抱かせるのは問題がある。
　俺はイギリス本土に親徳川親日本の民族を置いておきたいのだ。
　そして隣国アイルランドとの関係は勿論だが、イギリス本土もずっと民族問題で内部闘争を繰り返して欲しいのだ。

　だから非アングロサクソンの上陸軍は大きく迂回させて、リバプール湾のブラックブールに上陸させた。
　少しでも迎撃を少なくするためにリバプールは避けた。
　イギリス軍の四方面軍、スコットランド方面軍もウエールズ方面軍もフランス対岸方面軍防衛軍もコーンウォール半島方面軍も避けた、安全を優先した上陸だ。

　当然だが上陸軍が少しでも安全になるように、徳川軍のコーンウォール半島上陸軍とスコットランド上陸軍には陽動攻撃をさせた。
　非アングロサクソン上陸軍を輸送した艦艇と海上封鎖をしている艦艇以外には、イギリス軍フランス対岸方面軍防衛軍に上陸すると思わせるような操船を行わせた。
　だからほとんど損害を受けることなく、非アングロサクソン上陸軍をイギリス本土に上陸させることができた。

　これがイギリス崩壊の止めだった。
　イギリス軍に強制徴募されていた非アングロサクソンが一斉に脱走した。
　徳川家の上陸軍に逃げ込んで助けを求めた。
　なかには勝ち馬に乗ろうとした者もいただろうが、誰だった負けると分かっている軍に残って殺されたくはないのだ。

　俺はイギリス王家を大名か旗本として残す心算だった。
　だが非アングロサクソンのアングロサクソンに対する恨み辛みが強すぎた。
　イギリス王家が根絶やしに近い状態にされた。
　アングロサクソンの貴族も隠れ潜む者以外は皆殺しにされた。
　俺の手を汚さずにアングロサクソンを皆殺しにできるのなら好都合なので、非アングロサクソンの暴走を現地司令官に止めさせなかった。
　いや、見逃せとまで言った。