転生 徳川慶勝 日露開戦 日米開戦

克全

第217話:一八四四年、大戦略的謀略

 まず最初にやらなければいけないのは、情報の秘匿だ。
 こちらの考えが敵に見抜かれてしまったらどうしようもない。
 だが同時に関係各国、いや、オスマン帝国だけには許可をもらう必要がある。
 誰だって無断で囮に使われるのは嫌だからな。
 問題はアブデュルメジト一世とムスタファ・レシト・パシャが同意してくれるかどうかと、オスマン帝国内で情報の秘匿ができるかどうかだった。

 有難いことに俺の心配は杞憂に終わった。
 俺が思っていた以上にアブデュルメジト一世とムスタファ・レシト・パシャには戦略眼があり、しかも有能だった。
 まだこの時には分からなかったが、オスマン帝国内で情報の秘匿は完璧に行われ、我々はペルシア帝国を罠に嵌めることができた。

 この頃のペルシア帝国はガージャール朝が支配していた。
 皇帝は一八三六年に即位したモハンマド・シャーだ。
 ロシア帝国との二度の戦争でグルジアなどカフカズ方面の領土を失い、それを徳川家がロシア帝国を滅ぼし手に入れた事で、内心敵意を持っていたのだろう。

 まあ、俺も元々頻発する国内の叛乱に苦しんでいたペルシア帝国では、アーガー・ハーン一世がリーダーとなっているイスマーイール派、セイイェド・アリー・モハンマドが組織したバーブ教徒に迂回資金融資をして、叛乱を激化させていたのだから、敵意を持たれても仕方がないのだけれどね。

 そんな状態で俺は、いや、俺の軍師役達や現地司令官が戦略的なスキを作った。
 まず大前提として、オスマン帝国がオーストリア帝国との戦争で主力軍を大遠征していて国内兵力が減っている。
 徳川家も占領したロシア領に駐屯していた大軍勢をアフリカに遠征させている。

 ペルシア帝国は完全に徳川家の兵力を誤認していたのだろうな。
 三十万のも大軍をアフリカ方面に艦艇込みで大遠征させたら余力はないと。
 更にドイツ方面に二十万もの大軍を移動させたから、余力など全くないと。
 近年の間にロシア帝国に二度敗北し、イギリス相手の第一次アフガン戦争でも一八三九年と一八四一年の二度もヘラートを占領されているほど、ペルシア帝国は情報収集もできなければ外交もできないくら、愚かで弱い。

 まあ、もっとも、相手は近代化されている欧米列強だから仕方がないともいえる。
 その近代化された欧米列強に勝っているのが徳川軍だ。
 ロシア帝国を滅ぼして占領している。
 イギリスが相手でも二度の海戦で完勝している。
 開戦の大義名分さえ手に入ればペルシア帝国相手に負ける事はない、と思う。

 だからこそわざとスキを作ってペルシア帝国の欲を掻き立てたのだ。
 問題はペルシア帝国がオスマン帝国と徳川家のどちらに攻めてくるかだ。
 できれば徳川領に攻め込んでほしいモノだ。
 後々の事も考えればオスマン帝国民に悪感情を持たれたくない。
 それと、朝廷工作もしなければいけないな。
 素直に受けないようなら反幕府運動をしている連中を皆殺しにしてやる。

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