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克全

第210話:一八四三年、欧州動乱

清国との領土割譲交渉は時間をかけて行う。
イギリス第三次東洋艦隊が紫禁城を占領し続けていれば、どんどん条件がよくなるのが分かっているのだ、慌てる必要などない。
欲に駆られた東インド会社と契約しているインディアマンが、ならず者を集めて三々五々参戦して清国を略奪すれば、もっと条件が良くなるだろう。
私掠免許を受けた者が参戦してくれれば更に清国は追い込まれる。

清国方面はそれでいいのだが、問題は欧州方面だ。
イギリスが虎視眈々と介入の機会を伺っている。
スペインではジブラルタルの領地を広げようとしている。
内乱がどんどん酷くなっているから、それに付け込む気だ。
カスティーリャ王国、バレンシア王国、ナバラ王国、アラゴン王国、パンプローナ王国、ナヘラ王国、アンドラ公国、アンダルシア候国、ナスル侯国、ポルトガル共和国などが独立を宣言していて、群雄割拠の状態となっていた。

ハプスブルク家とボナパルト家にブルボン王朝の王党派も介入している。
バルドメロ・エスパルテロ将軍派と反対派も争っている。
ポルトガル共和国はフランスの共和党に触発されて共和国家を目指す者達と商人達に郷土愛を持つ者達が呉越同舟して完全独立を目指している。
イギリスが支援してジブラルタルを後方支援地としたアンダルシア侯国がある。
さらにロシアの脅威がなくなり国内貴族や富裕層の統制が進んだオスマン帝国が、国内の反対派をスペインに派兵してすり潰そうとしていた。
スペインは昔イスラム教の国だった時代がある。
アンダルシア地方のナスル朝、グラナダを都とする国は十五世紀末までは存続していたから、領地奪還といえなくもない。

だがオスマン帝国の侵攻はそれだけではない。
バルカン半島を取り返そうと大軍勢を投入している。
ロシア帝国の脅威が全くなくなった事、エジプト方面が安定している事、ペルシャを徳川家が抑えている事、国内の反抗勢力を戦いですり潰す目的、そんな条件が整った事で可能となった大戦力の投入だ。

俺が特使を送ってセルビア人やハンガリー人などの半独立を認め、属国とするように進言したのが破竹の勢いの繋がっていると思う。
北アフリカのアルジェリアやエジプトで独立採算の自治州を認めていたのだ。
オスマン帝国が王国や公国、共和国や自治都市を属国にしていてもおかしくない。

オスマン帝国が大軍を整えて北上したことで、オーストリア帝国も大軍を整えて迎え討とうとした。
両帝国がバルカン半島で激しく激突した。
これを座視するようなプロイセン王国のフリードリヒ・ヴィルヘルム四世と王弟ヴィルヘルムではなかった。
背後からオーストリア帝国に襲い掛かったのだ。
史実よりも二十数年早い普墺戦争の始まりだった。



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