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克全

第204話:一八四三年・予言ではなく大戦略

昨年から今年にかけては内政を重視させている。
国内総生産を増加させて民に豊かな生活をさせてこそ治安がよくなる。
転生直後の日本を黒船から守る、明治維新でいわれのない悪名を被せられ不利益を受けた人達を復権させる、そんな目的からは外れ過ぎている。
どう考えても今の俺は極悪非道だ。

だが目には目を歯には歯を、植民地主義で白人至上主義の欧州列強に対しては、悪になって戦わなければいけない。
そう覚悟を決めて侵略者になったのだ。
その罪滅ぼし、自己欺瞞の為にも支配下に置いた民には幸せになってもらう。
豊かな生活が送れるようにして、共産主義者の台頭も抑える。

まあ、積極的な侵攻は行わなわなくても、最前線の攻防だけでも日本本土に匹敵するくらいの領地が増減する。
最前線での屯田に力を入れるか入れないかだけで、三〇〇〇万石くらいの食糧生産力に差が出てしまう。
それに加えて後方の安全地帯を開墾開拓開発するのだ。
その上で欧州列強に謀略を仕掛ける。

一、ハプスブルク家の連携を叩き潰す。
ナポレオン三世を名乗る男がナポレオン二世の子供ではないという噂を流す。
ハプスブルク家のナポレオン三世とボナパルト家のナポレオン三世を争わせる。
ハンガリー人を支援して独立戦争、内乱を始めさせる。
嫁姑を争わせてハプスブルク本家の連携に楔を打ち込む。
プロイセン国王のホーエンツォレルン家とハプスブルク家を争わせる。
小ドイツ主義と大ドイツ主義を争わせるのだ。
普墺戦争を早期に勃発させて出来れば共倒れさせる。
スペイン王家にハプスブルク家の人間が王配として送り込まれないように反対派を支援する。

二、復興してきたオスマン帝国にバルカン半島を侵攻させる。
これはハプスブルク家への圧力にもなる。
オスマン帝国が強力になれば信用できないペルシャへの牽制にもなるだろう。
だが強すぎるオスマン帝国は危険でもある。
オスマン帝国が敵に回った時には、黒海で建造した艦艇を地中海に送れなくなってしまう、艦艇建造の拠点をエジプトに移すべきだろう。

三、スペインを内乱に陥らせる。
ハプスブルク家の連携を叩き潰すのが主目的だが、できればスペイン国内を戦国時代にさせる。
ネーデルランド、カスティーリャ、ナバラ、カタルーニャ・アラゴン・バレンシア、バスクなどの数カ国に分裂してくれれば最高だ。
一九三六年から一九三九年まで第二共和政期のスペインで発生した内戦のようになってくれれば、スペインは列強の座から滑り落ちるだろう。

四、フランスで内乱を勃発させる。
ハプスブルク家のナポレオン三世とボナパルト家のナポレオン三世を争わせる。
これに王党派と共和党派を加わらせて百年戦争時代のように分裂させる。
小国が乱立する地域になれば力を失うだろう。

五、イタリアでも内乱を勃発させる。
もともと小国や都市国家が争っていた半島だ。
国内での地域差別や民族差別意識が強い。
それを煽ってやればいい。
ローマ、ナポリ、ミラノ、サヴォイア、シチリア、トスカーナ、サルデーニャ、ヴェネツィア、教皇領などに分裂させることができれば最高だ。

六、イギリスにも謀略を仕掛けなければいけない。
イギリスを利用して清国を叩きたいのだ。
だが欧州列強が大陸内戦争や内乱で国力を落とせば、欧州列強がアフリカや南部に持っている植民地や利権を優先するかもしれない。
徳川家と清国の同盟が強固ならば第三次東洋艦隊の派遣を諦めるかもしれない。
だから清国の背信情報を流して、徳川家と清国が敵対していると教える。
イギリスが清国に攻め込んでも徳川家は支援しないと伝えるのだ。

七、欧州列強が外敵と争い内乱で苦しむように誘導するのは日本人では無理だ。
イスラム商人も警戒されていて信用されないだろう。
ポーランド・リトアニア王国の人間にやってもらう。
表の工作員として欧州が連携して徳川家に対抗できないようにする。

問題は裏工作員だ。
長く活動してもらいたいポーランド・リトアニア王国人には、あまり酷い事はやらせられない。
欧州で差別され苦しい生活を強いられているジプシーを味方につける。
元々移動型民族の彼らなら各国を渡り歩いても疑われ難い。
さて、昨年から行っているこの戦略がどこまで成果を出してくれるかだ。

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