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克全

第200話:一八四二年、予言ではなく戦略構想

最近は戦術や方面戦略は軍師役や現地指揮官に任せている。
俺がすべきなのは世界規模の戦略構想だ。
それが必要になるくらい戦線が拡大している。
そうしなけれいけないくらい最前線の現実に情報伝達速度が追いついていない。
電信の整備が必要不可欠だが、まだまだ時間がかかる。
欧州の技術者に研究させて日本人に改良実用させている。

大戦略上の一番の問題はイギリスと清国だった。
イギリスはジョン・ブルの不屈の精神を失っていない。
いや、そんな風に美化してはいけないな。
他者から奪い肥え太る略奪者の下劣な根性のままだ。
本土艦隊はもちろんあらゆる艦隊から艦艇を引き抜いて、第三次東洋艦隊を編成して清国に復讐を果たそうとしている。

これに対して清国は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」状態だった。
我が国に対しても締結した条約を有利に改訂しようとしている。
だから第三次東洋艦隊は迎撃しない心算だ。
交易には悪影響だが、イギリスに清国を叩かせる。
その為に紫禁城が焼かれ皇帝が殺されても構わない。
恩知らずにはそれに相応しい末路を与えるべきだ。

その為にはフランスとスペインを抑えなければいけない。
フランスではボナパルティストの力強くなり、イギリス本土占領を企んでいる。
少なくとも植民地の一部を奪おうとしている。
そんなことになったら、イギリスが第三次東洋艦隊を清国に派遣しなくなるかもしれないのだ。

できればフランスとスペインを咬み合わせたい。
両者が戦う事で疲弊させたいが、やり過ぎると徳川軍がイギリス本土進攻をする時に戦力が不足してしまうかもしれない。
戦わせたいが損害は抑えたいのだ。
何とも身勝手な考えだが、最初から停戦休戦を考えた戦争を始めさせたい。
難しい課題だが、軍師役に具体的な方策を考えてもらっている。

一つの案としては、オーストリア帝国を利用するものがある。
現在のスペインはイサベル二世が女王となっているが、実際には摂政のバルドメロ・エスパルテロ将軍の独裁体制だ
最初は母親であるマリア・クリスティーナが摂政を務めていたが、秘密裏に再婚していたのがバレてしまい、今は権力を失っている。

ここを刺激してスペインで内乱を勃発させるのだ。
ボナパルティストには、スペインを属国化させられると誘導してイサベル二世の王配にフランスに都合のいい人物を押し付けさせる。
オーストリア帝国には、ハプスブルク=ロートリンゲン家の血縁であるマリア・クリスティーナを復権させ、オーストリア帝国に都合のいい人物をイサベル二世の王配に選ばせるようにする。

もともとスペインはハプスブルク家の王朝だったのだ。
決して荒唐無稽とは言えない。
だがこちらに都合のいい程度の戦争で終わるかどうかは分からない。
イギリス本土侵攻に必要な艦艇は、エジプト、ポーランド・リトアニア、黒海沿岸で建造するという計画だが、どこまでこちらの思い通りに動いてくれるだろうか。

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