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克全

第153話:一八三六年、補給戦争

ロシアをはじめとした敵対勢力の襲撃が激しい。
正面から大戦争になる事はないのだが、それなりの部隊、いや、部族が輸送隊や補給隊を攻撃してくる。
哀しい話だが、味方であるはずのペルシャの諸侯が襲ってくる。
まあ、最初から覚悟はしていた事だから、それほど落ち込みはしない。

他にもコサック、モンゴル、ティルク系が、部族や一族単位で襲撃してくる。
彼らから見れば、松前藩の輸送隊や補給隊は格好の獲物なのだろう。
喉から手が出るほど欲しい、金銀財宝や物資を運んでいるのだから。
地域によって塩が貴重な部族もいれば、砂糖を手に入れたい部族もいる。
最新式のドライゼ銃を手に入れてロシアに献上すれば、莫大な報酬が得られる。

まあ、こうなることは予測できていたから、こちらも数を揃えた輸送隊や補給隊を送っているから、少々の物資は奪われても全滅させられた事はない。
最初から奪われることを前提に、被害担当の牛に背負わせた、戦略上問題のない雑穀を積んだ牛を放っている。

盗賊達の中には、家族が餓死するか奪うかの瀬戸際で生きている者もいる。
我が軍に加われば衣食住が保証されるのだが、激烈な戦いに送り込まれるのを恐れてか、部族の誇りのためか、降伏臣従よりは盗賊の道を選んだ者達だ。
そんな者達だから、自分と家族が生きていける雑穀と牛が手に入ったら、欲張らずに命大事に撤退する盗賊も多い。
まあ、蒸留酒が欲しくて襲ってくるアル中もいるのだがね。

問題はロシアの支持で動いている半分軍隊のコサック族の襲撃だ。
味方に取り込めるコサックはできるだけ調略したが、ロシアの勢力圏で特権を保証されているコサック族は、取り込むことができなかった。
そのためカザフ高原辺りから散発的なコサック族の襲撃がある。
バルハシ湖の南岸ルートからアラフラ海の南岸ルートを通ることで、今のところは被害を限定することができている。

だが問題はカスピ海の至ってからだった。
ここでカスピ海南岸ルートを使うとなるとペルシャ国内を通過することになり、ほぼ間違いなく全滅する。
ペルシャの権力者や諸侯は、国の方針などお構いなしに略奪に走る。
略奪を許してしまったら、形だけの同盟まで破綻してしまう。

だがカスピ海北岸ルートを通るとコサック族の激しい襲撃に晒される。
ペルシャと争うよりはましだが、最悪の場合は全滅する事もあるだろう。
だが俺が日本でうだうだ考えているよりも、現地で命懸けで戦っている者達の方が、創意工夫をしてくれていた。

カスピ海を渡ることができる艦艇を建造してくれていたのだ。
最初は丸木舟やカヌー程度だった艦艇が、今では西洋帆船のカッターやスループ、スクーナーやケッチまで備えている。
これにはポーランド・リトアニアから亡命人の中にいた、船大工が大活躍してくれたらしい。
カスピ海艦隊が整ったら、作戦の幅が大きく広がる。

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